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ペルシャ帝国の今~テヘランより

2012-10-30

ペルシャ帝国の今~テヘランより

2012年10月30日
東京都中小企業診断士協会
三多摩支部国際部
杉浦 順

仕事で9月下旬よりイランの首都、テヘランに来ております。

イランといえば核開発疑惑やイスラエルとの確執などで新聞を賑わせております。 それより前からイスラム革命(1979年)や欧米諸国の経済封鎖により日本から少し遠い国になっているかと思いますので、今のイランの状況をここテヘランに二週間余り滞在している旅行者の目でお伝えしたいと思います。

皆様すでに御存じかと思いますが、イランの正式名称はイラン・イスラーム共和国、面積は日本の約4.5倍、人口は7,800万人で首都テヘランに約680万人が暮らしています。民族構成は、ペルシャ人のほかトルコ系のアーザール人、クルド系で構成されており、宗教は世界的には少数派であるシーア派イスラムが強く、スンナ派イスラム、キリスト教、土着宗教であるゾロアスター教、ユダヤ教などで構成されています。

通貨単位はイラン・リアル(Rls)を使っておりますが、この為替レートが経済制裁により急激に低下していることが経済活動や国民生活に大きな影響を与えております。 ドルとの為替交換レートは、去年の11月は1$=11,000Rlsであったものが、今年の9月第4週は1$=22,000Rls、私たちが到着した9月第5週には1$=27,000Rls、10月第1週には1$=40,000Rls(いずれも市場価格。政府の公定価格は去年の11月のレベルのまま)と一年で約4倍に高騰しております。 これを受けて10月3日に為替商を中心とした民衆が政府の無策に腹を立ててテヘラン市内でデモを起こし、警官隊と衝突して一部暴徒化する事態にまでなりました。 この影響でテヘランの小売商の集まりであるバザールが暴徒の放火などを避けるために一時閉鎖される事態にまでなりました。 それでも私の宿泊するホテル(バザールから約3Km北)付近では何事も無かったかのように市民は普通の生活をしており、夜食事を摂りに近くのレストランまで歩いて行っても全く問題がありませんでした。

テヘランのがらくた市

デモの次の朝(こちらでは木曜、金曜が休日)に2時間ばかり市内を散歩しましたが、近くのエンゲラーブ大通りは警官隊と機動隊で埋め尽くされており、通る車を検問したりして警戒を強めておりました。 一方でその警官隊のすぐ後ろでは、いつものようにヤミ両替商が札束を手に持って堂々と客引きをしていたり、オートバイがスピードを出して2人乗りで通行人を蹴散らしながら歩道を走っていたりしている有様です。

ちなみにこの国では他のアジアの途上国でもよくありますが、オートバイは歩道を走ったり、車道を逆走したり、信号を守らないのは普通のことです。一昔前の中国北京や現在のベトナムの交通マナーを経験した私から見てもここテヘランの車の運転は恐ろしい状況で、車は横断歩道や信号は全く守らず、車道を渡るのは我々外国人には命がけの仕事です。

道路の整備状況や舗装状況は比較的良好で、特にテヘランから地方につながる幹線の高速道路は大変きれいに整備されており、舗装のメンテナンスも良好です。 これはホメイニ革命のきっかけとなった国内の貧富の差、都市と地方の差を解消する政治方針で高速道路網が整備されたことによるようです。 高速道路の速度制限は最高120Km/hですが、このスピードで3車線の道路を4台~5台の車が並走しており、車間距離も1mくらいまで詰めて、警笛を鳴らしながら走っています。タクシーの後部座席に座っていても思わず足を突っ張って体を固くする場面が何度もありました。 聞くところによると、イランの一年間の交通事故死者数は3万人を超えているということで人口比を考えると日本の一桁上という状況のようです。 1週間の滞在の間にも目の前で買い物帰りの男が横断歩道上でオートバイにひっかけられ、転倒して道路に買い物品が散乱し腕と足を負傷する事故を目撃しました。 ひっかけたオートバイはどこかに逃げ去ってしまいました。

このように伝えますと、イランとはなんと恐ろしい国かと思われるかもしれませんが、日本人には慣れれば居心地の良い国かもしれません。 まず、治安がとても良いです。 いわゆる浮浪者や物乞いを見たことがありません。 夜中に一人で街中を歩いていても全く身の危険を感じません。 スリや詐欺は多いようですので注意は必要ですが、強盗や暴力行為は少ないようです。 特に日本人に対しては好感を持っているようで、日本人とわかると親しげな眼差しで話しかけてきます。日本人は礼儀正しく約束を守るし、相手の立場を尊重する民族と思ってくれているようです。 街中で中国人と間違えられたら、はっきりと日本人ですと伝えた方が良いと言ってくれる人もいるくらいです。

つぎに、イランの食事は日本人の嗜好にとても合います。いろいろなイラン料理をいろいろなレストランで食べましたが、この二週間あまりで一つも外しません。 主な料理は、キャバブ―(牛、羊,鶏)とホレシュテ(肉、野菜、豆の煮込み)です。 キャバブーは肉と野菜を串に刺して炭火で焼いたもので、味付けはほとんど無く、酸味のあるソースを付けて食べますが、なんとなく日本の焼き鳥を食べているような味です。 キャバブーにはたいてい焼きトマトと生のたまねぎが付いてきます。 ホレシュテも味付けは塩味で辛くなくシチューのような感じでとてもおいしいです。 これにコメかナーン、チーズ、ハーブを添えていただきます。果物も豊富で、メロン、すいか、ピーチ、チェリー、アプリコット、リンゴ、ブドウなどなど。どれもみずみずしくておいしいです。 これにヨーグルト(飲料もある)が付いてくるのが定番です。 夕食に少し贅沢をしても一人あたり円に換算したら¥1,000から¥2,000程度です。

唯一の問題は、お酒が一切飲めないことです。私は日本では365日晩酌を欠かさないのが自慢でしたのでどうなることかと思いましたが、無ければ全く欲しくならないので驚きました。 でもやはり、おいしい料理にはお酒があった方がよりおいしく頂けるだろうなと考えながらノンアルコールビールを傾けております。 イスラム革命前はお酒が飲めたので、みなさん飲めないわけではなく、実はお好きな方が多いようです。

最後に少し経済の話をしたいと思います。 米欧の経済制裁により、米欧との輸出入ができないだけではなく、貿易決済のために米欧の銀行が使えないために他の国との間でも貿易が滞っている状況です。 いままでは過去に石油の輸出でため込んだ外貨を使って凌いできましたが、欧米銀行の資産が凍結されていることもありじわじわと影響が出てきているようです。 こちらの中小企業の方や商工会議所の方と話をしていると、経済制裁がいつ解消されるだろうかといった悲鳴が聞かれます。 こういう状況の中で中国が大量の石油を買い付けて、そのバランスを取るために安い値段で織物などを輸出してくるので地場の織物産業は次々と倒産しているという話も聞こえてきます。 日本式経営で在庫を最小限にして利益の最大化を図りましょうなどと言うと、「冗談ではない。今材料が買えるうちにたくさん買っておかないと次にいつ買えるかわからない。 次に買えたとしても為替が下がって値段が上がっているかもしれない。」と言われてしまいます。

それではこの国は大不況なのかというと、不思議な光景がたくさん見受けられます。ここテヘランはビルの建築ラッシュです。 市場には人も物も溢れています。 高速道路も新たに建設が進んでいます。 商店街も日本のようなシャッター商店街は見うけられません。 有名レストランは列ができるほどの賑わいを見せています。 どうなっているのでしょうか。

日本にいてイメージしたイランと来て見た状況がこれほどまで違うことの謎解きは、もう少しじっくりとこの国を見た後で後編としてお伝えしたいと思います。

 (続く)

 

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