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パキスタン便り

2013-07-24

パキスタン便り

三多摩支部 国際部

中川 泰夫

最近、チャイナプラスワンとしてミャンマーやカンボジアが脚光を浴びている一方、人口はミャンマーの2.8倍、カンボジアの11.7倍、一人当たりGDPはそれぞれ1.6倍、1.4倍(いずれもウェブサイト『世界経済のネタ帳』より)というパキスタンの日本での認知度はいまひとつ低いようです。
正式国名はパキスタン・イスラム共和国。インドネシアに次ぐ世界第二の回教徒国家です。東にインド、北は中国、西にはアフガニスタン、イランと国境を接し、南はインド洋(アラビア海)に面し、アジアと中東、アフリカ、東欧地域とをつなぐ地政学上の要衝ともいうべき位置にあります。
パキスタンの歴史はとても複雑でここでは紹介しきれませんが、1947年英領インドから分離独立以来、数次にわたる印パ戦争や旧ソ連によるアフガニスタン紛争を契機とした米国との同盟関係強化等国際政治の荒波に翻弄され、それが国内社会、経済面の不安定につながった面は否定できません。日本では各地のテロ事件がニュースになることが多く、怖い国という印象をもたれる向きがあろうかと思いますが、首都のイスラマバードは、その昔ガンダーラ王国の中心だったペシャワール、ラワルピンディに近接した、緑の多い落ち着いた街です。

私は、昨年11月から約1年間の予定で、産業省傘下の工業開発庁をカウンターパートとして、自動車産業振興政策の立案、実施支援業務に携わっています。
パキスタンはBRICsに次ぐNext 11に数えられ、国土面積は日本の2倍、1.8億人(世界第6位)の人口を擁し、その7割が35歳以下という将来性の高い市場ですが、自動車産業はまだ成長途上にあって多くの課題を抱えており、それだけにやりがいのある仕事です。
日本でも大きく報じられましたが、この5月に行われた総選挙で政権交代し、経済政策に強いとされるナワズ氏が首相に返り咲いたことで、自動車産業振興にも弾みのつくことが期待されています。
近年、パキスタンの市場としての将来性、中東、アフリカへの足掛かり、国境問題を抱える対インド牽制という観点から中国が関係強化の動きを加速させており、7月初めのナワズ首相訪中を機に、新疆ウイグル自治区からインド洋沿岸のグワダル港(昨年中国が港湾管理権を取得し、インフラ整備中)をつなぐ「中・パ経済回廊」建設をはじめ、水力・石炭・太陽光のエネルギー分野等8項目に上る大規模な支援が行われることになりました。日本の官民をあげた積極的な取組みが望まれるゆえんです。
パキスタンはイギリスの植民地だったことから、母国語のウルドゥ語に加え英語が公用語となっており、仕事だけでなく日常的にもコミュニケーションの問題は余りありません。しかし、だからといって仕事がてきぱきと進むわけではなく、発展途上国の御多分に漏れず、何事につけ日本の2~3倍の時間がかかるというのが心理的な時間感覚で、忍耐力が鍛錬されます。

今年は7月11日からラマダン(断食月)が始まりました。日中の気温が40℃近くまで上がる中、日の出から日没まで一切の飲食を断つため、午後にはかなり憔悴した様子で、役所の勤務時間は平日が9~15時、金曜日は13時までに短縮されるため仕事は更にペースダウンして、不信心な私も一層の精神修養を積まされることになります。病気等特別な事情があれば断食を免除され、後でやり直せばよいとされていますが、勤務時間の埋め合わせはしないでもよいようです。子供の場合、それが義務となるのは男子13歳、女子14歳とのこと。厳しい試練ですが、意外にも早く行いたいと望む子が多いそうです。日没後パーティのようにごちそうが並ぶ食事を大人と一緒に楽しみたい、一人前の回教徒として認められたいという気持ちがあるのでしょうか。
食事の主役は、スパイスの効いたカレー、肉(チキン、マトン、ビーフ)、野菜料理で、それをインドのナンを厚くした感じのロティやご飯と一緒に食べます。「パキスタンカレーは世界一うまい」という人もいますが、辛いものが苦手な私は残念ながらできるだけ遠慮しています。イスラマバードはインド洋から陸路1,400kmの内陸にあり、コールドチェーンが未発達なこともあり、夏季は魚介類を食べるなと言われています。それでも誘惑に抗しきれずエビ料理などに挑戦し、期待通り旨く問題が起きないことに味をしめて繰り返し注文すると、夜中に飛び起きる仕儀になります。日本人の間で「パキ腹」と呼ばれているもので、正露丸も効果なく、最後は地元の医者に駆け込まなければなりません。性懲りもなく同じ目に合っているうちにその医者とは顔なじみになりましたが、私を見ると「またか」という表情で、学習能力が低い人間と思われていることでしょう。

ところで、「ところ変われば…」の好例をひとつ。下の写真に写った鳥が何か分かりますか。腕が悪くて不鮮明ですが、正解はカラスです。気になってインターネットで調べたところ、ローマのカラスもツートーンだそうですが、写真を見ると模様が少し違うようです。「カラスの羽はなぜ黒い」をテーマにした民話や童話があり、私自身子供たちに読み聞かせた記憶がありますので初めて見た時には驚きましたが、顔も声もまぎれもないカラスです。

karasu

 

閑話休題。

 パキスタンに資本進出している日本企業は、約50社。他のアジア諸国に比して非常に少なく、パイの争奪戦が始まる前に進出すればパイオニアの地位を獲得するチャンスがあります。特に自動車部品業界では私の知る限り数社のみで、分野・大小を問わず日本の技術を持ち込めばトップメーカになる可能性は非常に高いといえます。治安面の不安、インフラ未整備等マイナスはありますが、新政権はこれらの解決を最優先課題として取り組んでおり、徐々に成果を挙げることが期待されます。一方、上述の将来性に加え、様々な投資優遇策があること、英語で仕事ができること、対日感情が良いこと、日系自動車メーカ4社(スズキ、トヨタ、ホンダ、日野)が圧倒的なシェアを誇り日本的生産方式の効率性、高品質が高く評価されていること等のプラス面も多々ありますので、多くの日本企業が当地に雄飛し、今後のパキスタン経済成長の牽引エンジンとして活躍する日が来ることを夢見ながら業務に励んでいます。
(注記:文中、断食に関する記述は当地での見聞で、厳密な調査に基づくものではないことをお断りします。なお、現地の人は「パキ」という表現を嫌いますので、当地においでの際はご注意ください)

以 上

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