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対カンボジア国際協力

2014-08-24

対カンボジア国際協力

三多摩支部国際部
櫛田 正昭

1. はじめに

今年の4月に東京協会のワールドビジネス研究会と株式会社ワールドビジネス・アソシエイツが共催した海外事業調査団に参加して、ラオスとカンボジアを訪問してきました。この調査団には中小企業診断士14名が参加し、三多摩支部国際部員5名(徳久、杉浦、永吉、田中、櫛田)が参加しました。

カンボジアと聞いて三多摩支部会員の皆様が思い起こすのは何でしょうか?多分先ずは、世界遺産アンコールワット、メコン川、長く続いた内戦・紛争、ポルポト政権による大殺戮、シハヌーク殿下の名前、といったところでしょうか。場所はインドシナ半島であることはわかるが、ベトナム、ラオス、更にはタイ、ミャンマーとの位置関係は正確にはわからないという方もいらっしゃるかもしれません。訪問前の私の知識もそんなものでしたから。ラオス、カンボジアについての情報(民族、歴史、文化、政治、経済等)は、今後調査団参加メンバーから順次報告をいたしますので、是非次号以下もお読みいただきたいと思います。

本稿はその第1弾で、特に、調査団報告書作成で担当したカンボジアに対する日本の国際経済協力に焦点を絞って述べてみたいと思います。

2. 日本の国際経済協力

国際協力とは「国際社会全体の平和と安定、発展のために開発途上国・地域の人々を支援すること」とJICAのホームページでは説明されています。世界の開発途上国の多くは、まだ経済的に貧困な状態に置かれ、人々の生活環境・衛生状況は劣悪であり、教育・雇用の機会は失われて、紛争・戦争に巻き込まれることも少なくありません。開発途上国支援は、人類共通の問題として取り組まれなければならない喫緊の課題となっているのです。一方経済面でもグローバル化が進むにつれ、多くの途上国が新たな投資先・市場として考えられるようになり、途上国の持続的発展のためには、民間資金を呼び込むための触媒としての国際協力の役割がますます重要と認識されるに至っています。国のベースで行われる政府開発援助(Official Development Assistance、以下ODA)、国際支援機関(世界銀行、アジア開発銀行等)を通して行われる多国間支援、そして種々の組織・団体(NGO、自治体、大学、民間企業)、市民の係わる支援活動といろいろな形で行われています。

日本では、閣議決定で「ODA大綱」というのが、ほぼ10年毎に策定され、それに従って経済協力が行われてきました。直近は2003年に作られたので、相当古くなり、今の政権で見直しが行われ、先日見直しの有識者懇談会の報告書が出され、新聞でも報道されているので、皆様お気付きかもしれません。議論の成果は「開発協力大綱」という形で近日中に発表になるとみられています。

日本のODAの抱える課題の一つは、国の財政悪化を反映して援助額が減少を続けてきたことです。表2に見るように、1980年代を通じて増加し、1989年には世界最大の援助国になりましたが、2000年代に入り減少し、リーマンショック以降は100億ドル前後(回収等を相殺した後の支出純額ベース)で推移し、2012年には106億451 万ドルとなっています(対前年伸び率2.1%減)。世界の中での位置づけとしては、2001年に第2位となり、2006年にイギリス、2007年にドイツ、フランスに越され現在は第5位です。

 図1:国別ODA実績推移

 出所:2013年版 政府開発援助(ODA)白書

経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)加盟国における順位)

またDAC諸国における政府開発援助実績の国民1人当たりの負担額(2012年)は、日本は83.1ドルで27カ国中第18位になっています。(1位:ノルーエー:952.7ドル、17位:米国:97.8ドル、22位:韓国:31.2ドル)。DAC諸国における政府開発援助実績の対国民総所得(GNI)比(2012年)は、日本は、0.17で27カ国中20位であった(1位:ルクセンブルグ:1.00、19位:米国:0.19、22位:韓国:0.14)。人口、国民総所得の絶対的な規模の影響はあるとしても、これらの順位の相対的な低下は、日本の国際的地位の低下を引き起こしかねないとの懸念の声も上がっているところです。

3. 対カンボジア経済協力

昨年2013年は、日本・カンボジア国交開設60周年の節目に当たる年でした。1975年ポルポト政権成立以降は援助を停止しましたが、1991年のパリ和平合意以降援助を再開し、同国の復興開発に積極に関与し、1992年以降日本はカンボジアの最大の政府援助供与国となっています。カンボジアは、まだ一人当たりGDPは933.61ドル(2012年IMF推計)で最貧国の範疇にくくられていますが、今まさに復興から開発と成長のステージに入ろうとしており、この状況に沿った、日本からの国際協力が要請されていると考えらます。

表1:諸外国・国際機関の経済協力実績

諸外国の対カンボジア経済協力実績         (支出純額ベース、単に:百万ドル)
暦年
1位
2位
3位
4位
5位
その他
合計
2006
日本
106.25
米国
57.87
豪州
33.1
フランス
29.77
ドイツ
27.64
106.25
361.34
2007
日本
113.56
米国
87.22
ドイツ
37.62
韓国
35.28
フランス
35.00
113.56
452.53
2008
日本
114.77
米国
69.78
豪州
39.03
フランス
35.16
韓国
34.66
114.77
459.72
2009
日本
127.49
米国
68.56
豪州
48.50
ドイツ
37.90
英国
32.31
127.49
473.71
2010
日本
147.46
米国
84.70
豪州
53.91
ドイツ
41.26
韓国
37.33
147.46
517.50
2011
日本
130.93
米国
73.78
豪州
71.55
韓国
62.23
スェーデン
28.53
130.93
490.90
                                           出典:OECD/DAC

カンボジアへの援助の基本方針は、ODA「カンボジア国別方針」の中で、「経済基盤の強化」、「社会開発の促進」及び「ガバナンスの強化」の3分野とすることが明らかにされています。これに加えて、日本政府が推進する「草の根技術協力事業」及び「中小企業海外展開支援事業」があります。

以下具体的な案件事例のいくつかを紹介します。

(1)経済基盤の強化
ⅰ)経済インフラの整備:
① 道路、橋梁、港湾、エネルギー、情報通信基盤等経済インフラ構築(チュルイ・チョンバー橋=日本橋改修計画等)。
② 南部経済回廊を中心とした道路ネットワークの整備(ネアックルン橋建設、国道5号線改修プロジェクト等)
③ 港湾施設(シハヌークビル港改修・改浚等)
④ エネルギー分野(大メコン電力ネットワーク計画等)
⑤ 情報通信基盤の整備(メコン地域通信基幹ネットワーク整備事業等)

ⅱ)民間セクターの強化:
① 民間からの投資及び貿易促進のための環境整備支援
② 投資受入機関(カンボジア開発評議会)の機能強化、人材育成(特に技術系、中間管理者)の育成。法令整備(投資法、経済特別区(SEZ)法改正等)、関税政策等。
③ シハヌークビル港経済特別区の整備
④ カンボジア工科大学(ICT)に対する技術援助、カンボジア日本人材開発センター(CJCC)への技術協力、雇用関連サービス向上研修に関する技術協力等

ⅲ)農業・農村開発:
① コメの生産性と品質の向上、灌漑施設の改修・整備(カンダルスタン灌漑施設改修計画、トンレサップ西部流域灌漑施設改修事業等)

(2)社会開発の促進 :
ⅰ)上下水道インフラの整備:
① プノンペン市水道当局(PPWSA)に対し上水道調査技術協力
② 8地方水道に対する技術支援
③ プノンペン市下水道事業

ⅱ)保健医療の充実:
① 国立母子保健センター建設、母子保健技術支援、国立結核センター改善、コンポンチャム病院改善計画、シハヌーク州病院整備計画、妊産婦・乳幼児ケア改善技術支援等

ⅲ)教育の質の改善:
① 科学及び数学の中学教師育成プロジェクト
② プノンペンにおける小学校建設(全18校)

ⅳ)対人地雷除去:内戦時代に敷設・投下された地雷・不発弾(600万個とも言われる)の処理。CMAC(Cambodia Mine Action)支援

(3)ガバナンスの強化 :
① 民法及び民事訴訟法の起草と法制度整備(プロジェクトフェーズ1)、
② 法曹人材の育成支援
③ 公共財政管理、国税および関税分野の政策・制度改善・能力強化に資する支援(租税総局能力強化プロジェクト)

(4)草の根技術協力事業

草の根技術協力事業は、国際協力の意志のある日本のNGO、大学、地方自治体及び公益法人等の団体による、開発途上国の地域住民を対象とした協力活動を、JICAが政府開発援助(ODA)の一環として、促進し助長することを目的に実施する事業です。JICAがNGO等の団体による主体的な活動の提案を審査し、ODAによる実施が妥当であると認める提案について、承認した活動計画に基づき、その事業を支援、共同で実施しています。訪問時のJICA説明書には夫々10件、2件、13件が記載されており、活発な活動がなされていることを確認しました。

(5)中小企業海外展開支援事業

ODAを活用した中小企業等の海外展開支援が,経済産業省・中小企業庁・JETROと連携のもと,実施されています。カンボジアにおける外務省委託事業には2012~2013年に次のようなプロジェクトが採択されています。①ニーズ調査として「小規模分散型浄水装置の普及展開」②案件化調査として「籾殻くん炭層普及のためのODA案件化調査」、「竹加工製品を利用した農村振興案件化調査」、「無電化・弱電化地域における流水式マイクロ水力発電プロジェクト案件化調査」、「パワーコントロールシステム事業可能性調査」、「精米機製造・販売事業に基づくODA事業化調査」の5件、③民間提案型普及・実証事業として「農協/支援パートナーの連携によるミニライスセンター普及・実証事業」「燕三条ブランド工具の普及・実証事業」の2件です。

4. 国際協力を受けるカンボジアの課題とこれから

カンボジアは第2次大戦終了後独立を果したものの長く紛争に巻き込まれ、特に1975年成立したポルポト政権の下では、多くの国民が命を失い、国土は荒廃しました。92年のパリ和平宣言の後は漸く平和と安定を享受することが出来、その間順調な経済成長(2004-2012平均成長率8%)と貧困削減を実現し、いまや復興から開発・成長のステージに入りつつあるとの声もあります。しかし一人当たりGNPはまだ1,000ドルを切る水準にあり貧困指数、乳幼児死亡率はじめ国民の生活に関する指標は、改善されつつあるとは言え、まだ劣悪な状況です。したがって、カンボジアはまだ開発途上国として今後とも経済成長のための努力を継続する必要があります。幸い人口ボーナスを享受できる人口構成、メコンの恵みを享受し得る国土に恵まれていますが、更なる開発に必要なことは、国際協力を十分生かせる受け入れ態勢を構築することだと思われました。

カンボジアを訪問して、日本が最大ドナー国として、カンボジアの復興に大きく貢献してきたことを実感しました。将来にわたりODA予算が削減を迫られている中で、従来以上に国際協力の成果を上げるためには、新しい潮流に沿った開発基本方針の検討、明確化、プロジェクトの作り込み、熱意を込めた実施が必要だと思いました。自由で公正な社会を作り上げることは、国際協力の究極の目的でもあり、不公正、腐敗した権力は断じて排除していく姿勢を強めていくことも必要でしょう。民間の活力を利用した取組も推進することが望まれていると思います。日本の国際協力は日本の国益のためになされるべきことですが、その国益については、長い目で見て判断していくことが必要で、相手国の国民の利益と福祉を重視した国際協力により真の効果を追求していくことが望まれると感じています。

新しい「開発協力大綱」が、海外協力の真の目的、効果的な運営の基本を定めてくれることを期待しています。

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