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物づくり企業の海外進出事例

2015-03-30

1.初めに

筆者は、業務上、東京都の多くの物づくり企業を訪問させていただいています。2008年のリーマンショックとその後の急速な円高で、物づくり企業にとって市場消失ともいえるほど国内市場がシュリンクしました。東京都の多くの物づくり企業も生き残りを賭けて様々な方法で海外ビジネスに取り組みました。鋳造メーカーのA社は、強み技術を武器に自動車分野で北米企業との直接取引に成功し、今や売上の70%が海外との直接取引となりました。切削加工メーカーのB社は、ベトナムのローカル企業と連携し、技術的に難しい案件は国内、ローコスト案件はベトナムと振り分けることにより、幅広い顧客ニーズに対応可能とすることで受注を拡大しています。精密切削加工メーカーのC社は、タイのローカル企業とのジョイントベンチャーによりASEAN向けの製品ビジネスに取り組んでいます。本稿では、C社の事例を詳しくご紹介します。

 

2.C社の事例

2.1 C社の概要

C社は、従業員13名の小規模企業ですが、ドイツ製の5軸マシニングセンターや3次元測定器など最先端設備をいち早く導入し、航空宇宙・自動車・医療・光学・工作機械などの分野で、高精度な精密機械部品の試作から量産まで対応している企業です。高い切削加工技術を有するC社の顧客は、各分野の大手企業ばかりです。リーマンショックは、精密切削加工技術を武器に、当時、主要顧客であった自動車メーカー以外の分野・顧客を新規開拓して乗り切りました。

2.2 C社のタイ進出計画

現在、C社では、取引先自動車メーカーのタイ新設工場をターゲット顧客として現地メカトロ系企業D社とのジョイントベンチャーで電装品の製品事業に取り組んでいます。C社が受注元、タイに開設するC社工場で切削加工部品を製作し、D社が電気系部品及び最終製品組立を行う計画です。C社のタイ工場は、初期投資を抑える目的も含め、工場建屋の一部を15社程度にレンタルし、国内中小企業のタイ進出インキュベーション工場とするユニークな構想です。同構想によれば、タイでの法人登記はC社が行い、入居企業は不要です。現地従業員の採用は、D社が支援します。輸出管理関係は、連携先商社が支援します。入居企業は、生産設備と工場長を送り込むだけです。入居企業の負担は、家賃、人件費(現地人及び日本人)、光熱費等含め維持費300万円/年程度の見込みです。C社およびD社が、CAD/CAM設計支援と計測・品質保証業務を代行する計画です。

2.3 進出計画の現状

レンタル工場は、アユタヤの工業団地内では開業手続きやコストの面で制約があるので工業団地から離れた場所に2014年2Qに開設予定でした。しかし、タイが軍事政権になってから作られた法律により不動産取引資格のない者は不動産を取得できないなど、不動産取引規制が厳しくなりました。また、レンタル工場は、本格投資する企業を優遇するとのタイ政府の意向と合わなくなりました。更に、会社設立に関する雇用ルール(外国人1人につきタイ人4人雇用)、資本金ルール(外国人1人につき200万バーツの資本金)が厳格適用されるようになるなど会社設立が難しくなりました。そのため、レンタル工場の開設に時間がかかっています。現時点では、2016年2Qのレンタル工場開設を目指して進めています。その間、D社の工場に間借りして製作していますが、電装品製品事業そのものは、順調に立ち上がりました。C社社長が月の半分は訪タイしなければならないほど繁忙を極めています。

2.4 C社社長の夢

C社社長の夢は、コンシューマー向け製品のメーカーになることです。国内で研究開発を行い、東南アジアで量産し、世界各地に営業拠点を設けて独自ブランド製品を販売するメーカーとなることです。C社社長の夢実現に向けての次のステップは、D社とのジョイントベンチャーによる家庭向け調理用ロボットの製品化です。東南アジアは、経済成長が著しい上に、もともと衣食住の生計コストが低いため可処分所得が高い地域です。従って、調理用ロボットなど新しい家電品の有望市場です。C社社長は、D社と組んで東南アジア市場をターゲットとする家電品メーカーに脱皮、2016年に事業を本格立ち上げし、2020年に年商10億円の企業になることを目指しています。

内山 朗

 

 

 

 

 

 

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