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ドイツ、バラ色の年金生活?

2016-11-21

三多摩支部国際部
栗山忠樹

ドイツの友人たちが次々とリタイヤしていく。正式な年金支給開始年齢を待たず、繰り上げ支給制度を利用して63歳でのリタイヤである。60歳を過ぎたころから指折り数え始め、その日が来るのが嬉しくてたまらない。すでに年金生活に入っている友人たちと話しても、毎日の生活が楽しくて仕方ないようだ。日本人がいだく年金生活のイメージと何が違うのだろうか。何が彼らをそんなに幸せにしているのだろうか。

日本と比べて裕福な暮らし?年金額が多い?

ドイツの年金制度も決して安定したものではなく、少子高齢化による財源確保の問題より、年金支給開始年齢は引き上げざるを得ない状況である。65歳だった開始年齢は段階的に引き上げられ、1964年生まれの人は67歳になってやっと年金が受け取れる。保険料率も19.9%と、すでに徴収できる限界にまで来ている。統計では日本に比べてずっと高い所得代替率を確保しているが、統計ベースが違うため一概に比較できない。友人たちの給与水準などをもとに計算すると、受け取れる年金額もそれほど多いわけではない。公的年金として手に入れられる額はどちらかというと日本の方が有利であるように思われる。

高齢貧困者の問題はドイツでも社会問題となっているが、OECDの2015年の調査では日本の19.4%に比べると、ドイツの貧困率は9.4%とずっと低い。つまり一定の収入を長年にわたって、安定して手に入れてきたサラリーマン層などにとっては、ドイツでは高額ではないにしても、生活に十分な年金が支給されていると考えてよいのだろう。

繰り上げ支給までして退職時期を早めたい、なぜ?

これはやはり、年金生活または老後の生活に関する備えと考え方の違いにあると思われる。内閣府の「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」1)によると日独間で下記の様な違いがあることが分かる。

<現在の貯蓄・資産が十分と考えるドイツ人>

「50代までに老後の経済生活に備えて行ったことを」という問いに対して、42.7%の日本人は「特に何もしていない」と答え、ドイツが26.1%であるのに比べ、何も備えをしなかった人の率が非常に高い。また現在の貯蓄や資産が老後の備えとして十分と考えるかどうかについてはドイツ人の66.3%は「十分・まあ十分」と考えるに対して日本では37.4%しかなく、57%の人が「やや足りない・全く足りない」と考える。ドイツでは若い時期から老後を考えて準備を進めていることが想像される。

<収入のためだけに仕事を続けたくない>

仕事については、ドイツ人の76.6%の高齢者が「収入を伴う仕事はしたくない=仕事を辞めたい」と答えているが、日本人は44.9%の人が仕事は続けたいと考えている。就労を継続したいと答えた人に対して、その理由を聞くと日本人は「収入がほしいから」が49%で最も多く、ドイツ人における「仕事そのものが面白い、活力となる」という回答(48.9%)と違ってくる。資産や貯蓄を十分に保有しながらも、なおかつ「仕事をしなければ食べていけない」と考える、日本人の漠然とした不安が背景にあるのではないだろうか。

<近所や友人とより盛んな交流が行われている>

ドイツでは友人・知人に限らず地域社会との交流が盛んにおこなわれている。お茶や食事を近所間で共にするなどに限らず、地域のイベントに参加したり、定期的な集まりを友人たちと行っている高齢者が多い。近所の人との付き合い方に関する質問でも、「相談事があった時、相談したり、相談されたりする」と答えた人はドイツでは48.3%、日本では18.6%となっている。高齢者の孤立感について言えば日本の方が問題は多い。

まとめ

日本では定年退職後、輸入高級車を買ったり、海外旅行に行く、郊外に移住したりと、現役時代に果たせなかった夢を実現しようする人も多い。しかし、それも一時に限られ、すぐに典型的なシニア層「貯蓄・資産は多いが、所得は少ない」に基づき、消費は極めて限られた分野、例えば健康・医療の分野に向けられる。一方ドイツでは、先に述べたように、近所、友人たちとの交流は非常に密でリタイヤ後はますます頻繁に集まったりし、お金をかけずに楽しむ方法を身に着けている。 複数の人から聞かされたこととして「年を取って覚えたことはいかに、少ないコストで人生を楽しむかだ。」がある。もともと質素なドイツ人はますます質素になり、しかしその一方、時間を惜しみ、余暇の達人になろうとしている。筆者が感じたドイツの豊かな年金生活の例は、年金額や社会資本とは関係なく、彼らの周到な「準備」よってなし得られたものである。高齢になるずっと前から地域との交流を図り、年金生活のために資産を蓄え、どのように年金を使って余生を楽しむかをすでに想像する。この「準備」があるからこそ、リタイヤを心待ちにさせ、リタイヤ後も計画実行が容易となるのである。

 

1)内閣府「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査(平成27年)
調査対象:日本、アメリカ、ドイツ、スェーデンの60歳以上の男女

 

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