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香港の最新事情~予測困難な30年

2018-08-04

東京都中小企業診断士協会
三多摩支部国際部
徳久 日出一

6月末、多摩ラボ(多摩経営工房)のメンバー15名と香港視察に出かけてきた。2年ぶりの香港だったが、やっぱり香港は元気で楽しく魅力的だった。4日間の短い滞在の中で、特に印象深かった点について述べてみたい。

■変わったもの、変わりつつあるもの
1997年の英国植民地から中国への歴史的返還から20年が経過し、中国の影響が大きく感じられる。返還した時の取り決めで、50年間は「香港特別行政区」として1国2制度を厳守することになっているが、残りあと30年を切った現在、1国1.5制度になりつつある。
言葉一つを取ってみても、広東語と英語が公用語の香港では、以前は普通話(中国の標準語)や中国で使われている簡体字はほとんど通じなかったが、今ではかなり使われるようになってきた。ただし、中国人に対する香港人の感情には、きわめて複雑なものがあることを実感した。
観光客は香港の経済にとってありがたい存在であるが、中国人だけは、行儀が悪く大声で話したり、ルールを守らなかったり、平気でごみを捨てたりするため、一般的には嫌われていて、結構冷たい扱いを受けているようである。中国語の達者な私の友人が、ある店で、中国語(普通話)で話しかけたときには大陸の中国人と間違われてぞんざいな扱いだったのが、英語を使って日本人であることが分かったとたん、急に態度が変わったと言っていた。
香港の人口は740万人(2017年)だが、まだ増加している。それは大陸等からの移住者(投資家やビジネスマン)や外国人メイドの影響である。そして、少子高齢化も急速に進んでいる。しかも、いつの間にか日本を抜いて、男女とも香港が世界一の長寿国になっていたのには驚いた。食糧事情や医療環境の発展によるところが大きいと思われる。

■変わらない香港の魅力
いつも香港を訪れるたびに感じるのは、国際都市としてのにぎわいや活気である。東京都の半分しかない面積の中で、開発されたわずか25%の部分に、オフィスやマンションなどの高層建築が乱立し、ちょっと歩けば、街中がショッピングセンター化したかと思われるほど繁華街の開発が進んでいる。その周りには、高級な海浜リゾートや公園、スポーツクラブ、レジャー施設、ホテルや観光資源など、狭い土地を上手に活用して、利便性に富んだ都市づくりが進んでいる。
市内を走る公共の交通機関はさらに充実し、地下鉄は10路線以上にも延長しているが、昔ながらの海上フェリーや路面電車は昔のままだ。タクシーやバスも深夜まで走っているし、治安が良いので夜中でも安心して街中を歩き回われる。
香港の魅力の一つは飲食である。相変わらず世界一の中華料理を楽しむことができる。世界中のグルメから絶賛された高級店から庶民的な屋台風のお店まで、この激しい競争社会の中で生き残った品質のレベルは最高である。しかし、不動産価格や人件費の高騰により料理の値段も高くなり、以前のように「安くて美味しい」とは言えなくなったことは残念である。ただし、アルコール類に関しては、フリーポートで輸入税がかからないので、ヨーロッパの有名なビールやワインが日本よりかなり安く飲める。香港の六本木とも称される蘭桂坊(ランカイフォン)では、この暑さにも関わらず、外国人や地元の若者達であふれ、店の外の街路まで大賑わいであった。
香港のマーケットは偉大である。人口は700万人強に過ぎないが、海外からの訪問客は日本の倍以上で年間6,000万人を超えている。そのうち中国人は8割近いが、目的は観光よりも買物や飲食が中心である。アジア有数の大市場として、変わらぬ活力と魅力のある街である。香港に行くと、いつもそのエネルギーを吸収して元気が出てくる。

■複雑な香港人のメンタリティ
香港は今や平均所得も日本を超えており、日本を訪問する香港人は年間200万人に達している。ざっと3人に1人は毎年日本に来ていることになる。香港の人達は中国人と違って、団体ではなく個人旅行を選択し、モノよりコト消費に興味を持っており、話題のスポットやイベント等を事前に調べてから訪問する人が多いという。中には何度も日本を訪れている熱心なリピーターも多く、銀座の一流レストランで食事を楽しんだり、レンタカーで地方を回ったり、われわれよりも日本の事情に詳しいくらいである。
彼らが日本や香港で一番嫌っているのは、中国人に間違えられることである。元々は中国から移住してきた子孫であるにもかかわらず、香港で生まれた彼らは、香港人としての自覚と誇りを持ち始めている。英国植民地の時代に生まれ育ち、海外への留学経験を持つエリート層も多い。だからこそ、一派ひとからげで中国人と言われることに大きな抵抗を感じている。
現在、中国ではどこへ行っても当たり前になったスマホによる決済システムや、レンタサイクル、タクシー配車アプリ等も香港ではほとんど見られない。国境(?)も接している同じ民族でありながら、香港人のメンタリティは複雑である。
2047年に「香港特別行政区」がどのような形で終焉し、中国の一部として今後も発展し続けるのか、その時、香港人はどのように思考し行動するのか、できることなら長生きして見届けたいものである。

 以 上

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