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国際オープンセミナーのお勧め

2016-08-31

三多摩支部国際部
永吉和雄

東京協会国際部主催のオープンセミナーが7/30(土)に銀座中小企業会館9階ホールにて開催されました。今年は懸案になっておりますTPPに焦点を当て、「激動する国際情勢と中小企業の海外展開戦略~TPPの行方とニューフロンティア~」をセミナーのテーマといたしました。講師として、東京財団研究員兼政策プロデューサーで国際政治、安全保障、経済政策を専門とされている浅野貴昭様、中小企業基盤整備機構理事・中小企業診断士で、中小企業の海外展開戦略に長く携わってこられた渡部寿彦様の2名をお招きしご講演いただきました。また、その後参加者との活発な議論が行われました。
浅野様には「TPPと経済外交~次代の経済秩序をめぐる国際競争~」と題したご講演をいただき、
1)TPPを含む日本の経済協定の現状、
2)TPP発効への鍵となる米国政治と自由貿易についての動向、
3)TPPの今後とその他メガ経済協定への影響、
にわかりやすく整理してお話しいただきました。

TPPについては、参加予定国各国の産業に与える影響、各国内の世論と政治的な取り扱い、安全保障上の意義等、実に様々な視点から議論されています。RCEP等の他のメガ経済協定の動向とも絡み、複雑な駆け引きも行われているようです。最近では、アメリカ大統領選挙において、ヒラリー・クリントン氏、ドナルド・トランプ氏の両候補とも反対の立場を表明していることから、発効は現実的ではないのではないか、との雰囲気も強くなってきているかと思います。そのような中、浅野様には、米国政治情勢について、国際政治の専門家ならではの切り口で、大変に興味深いお話しをいただきました。お話しの中で、米国内においても活発になってきている推進派経済団体の動き等、発効に向けた着実な動きについての様子も知ることができ、TPPその他経済協定についてフォローしていく際の視点ができたように思います。
渡部様には「中小企業の海外展開戦略~拡大する海外マーケットへの挑戦(AEC/TPP)~」を演題にお話しをいただきました。激動する国際情勢の中での海外展開は中小企業にとって大きなリスクを伴います。一方、縮小する国内マーケットにもはや固執してはいれない状況でもあるはずです。中小企業の海外展開を長く支援してこられた渡部様のお話しは、現状の分析、具体的な事例の研究に裏打ちされ、具体的なヒントを多く与えてくれるものであったと思います。

TPPを睨んでの動きとして、近年、中国からベトナムへの生産ラインのシフトが見られます。TPP加盟国への輸出を睨み、中国系の企業を中心に生産拠点を移していることが、ASEANで最も元気がよいと言われるベトナム経済の背景になっているかと思います。生産のため関連産業の大きな集積を必要とする自動車産業はすぐに立地が変化するとは考えにくいですが、アパレル、電子機器等、部品・製品が比較的軽く、空輸を含めた輸送が可能な産業についてはこれからも製造拠点の移転が進む可能性があると思います。渡部様より、経済協定のメリットを活かしていない企業が多いとの話がありました。今後、我が国においても経済協定でカバーされる貿易相手国は増えてまいります。中小企業も含め、自社の海外展開戦略に経済協定の活用を取り込んでいくことが必須であると改めて痛感いたしました。
今年の東京協会国際オープンセミナーには、猛暑にも関わらず80名以上の方々にご参加いただきました。また、セミナー終了後に行われた国際派診断士納涼懇親会には、お二人の講師にもご参加をいただき、議論を深めながら親睦を図ることができました。海外展開(支援)は、幅広い知識に加え多岐にわたる分野での専門性が要求されますので、1人で対応することが難しいケースがほとんどです。この様な機会に積極的に参加し、ご自身のネットワークを拡げていくことは、大変有用であると思います。
なお、三多摩支部国際部では、10月28日(金)の18時30分より、武蔵境駅前の武蔵野プレイスにて国際オープンセミナーを開催いたします。昨年末に経済統合に至ったASEAN諸国に焦点を当てて、情報提供を行います。企業の方々、会員の皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。

 以 上