紅茶とハーブ香る 光の国スリランカ
東京都中小企業診断士協会
三多摩支部国際部
杉浦 順
スリランカというとどこの国かと首をかしげる方も多いと思いますが、セイロンと聞けばあの紅茶の国かとわかる方が多いことと思います。日本では未だにイギリス領であったころの呼称であるセイロンの方がよく知られています。
スリランカは1948年にイギリスから独立して現在のスリランカ民主社会主義共和国となりました。スリランカ(Sri Lanka)とはシンハラ語で「光輝く島」という意味で、太陽の光を受けた大海原が光り輝いている緑の多い自然豊かな明るい島国です。
2009年に長く続いた内戦が終結し、その後は政治の安定と治安安定により、高い経済成長率(平均6%/年以上)を維持しており、日本の中小企業が初めて海外進出するには打って付けの国の一つと言えます。以下にその知られざる全貌の一端をご紹介したいと思います。
面積は北海道の0.8倍の大きさで、インドの南に位置しており、インド洋を介してアジアとアフリカ、中東との交易の要衝として古くから栄えた場所です。コロンボ港は自然の深海港であり大型船が入港できることもあり、ポルトガル、オランダおよびイギリスの植民地であった歴史を持ちます。
人口は2000万人余りで、人口密度は日本とほぼ同じくらいです。最大の特徴は、英語が公用語(連結語)のひとつであり、教育水準が高く識字率が90%以上あることです。途上国への海外進出に際して英語で取引や生活もできることは、進出に際しての大きな壁の一つが低くなると思われます。
2014年の名目GDPは823億ドルですが、2009年の内戦終結からの平均成長率は6%を超えており、5年前と比べると約2倍以上に増えています。1人当たりのGDPも約4,000ドルと高中所得国(UMIC)の分類となり、インドやパキスタンの2.5倍以上で、インドネシアやフィリピンよりも多い水準です。このように一定規模の人口と所得があることから、これからは消費財の市場としてもたいへん魅力的です。GDPの構成比で見てもサービス業が56.6%と最大であり、鉱工業26.2%、農・漁業7.9%が続く構造であり、今後鉱工業が伸びる余地を残しています。
貿易額は、輸出105億ドル、輸入189億ドルと84億ドルの大幅な輸入超過となっています。主な輸出品は繊維製品・衣類が半分近くを占め、その他工業製品、紅茶とゴム製品が続きます。その他にはスパイス類やココナツなどの農産物があり、金額は少ないですが豊富な種類の宝石類が取れることでも有名です。輸入は工業製品の部品や材料などのその他中間財、燃料、繊維製品、機械・機器が続きます。最大の輸出品である繊維製品・衣類も材料となる糸や生地などは輸入して、手先の器用さと安い労働力で衣類に加工して輸出している実態が現れています。
コロンボの一般工(ワーカー)の月給はおよそ平均$150くらいであり、ベトナムのホーチミンやパキスタンのカラチよりも安い水準です。
国民性は、主な宗教が仏教(小乗仏教)であり周りが海で囲まれている島国であるせいか、日本人と相性が良いようです。たいへん真面目で手先が器用であり教育熱心であることから、日本の中小企業が進出しやすい国民性です。
また、この国では5S/カイゼンが広く普及している点も特筆すべきメリットです。この国の5S/カイゼン活動の一部は、2015年8月22日の本コラム「スリランカ 驚きの5S活動」として江崎氏が報告していますが、今回現地の衣料品店チェーン企業と衣料品製造工場を視察してきてその熱心さと徹底ぶりを目の当たりにして改めて驚きました。
このように、国民性が日本人と相性が良さそうで、教育レベルが高く勤勉、手先が器用、英語で仕事ができる、人件費は近隣諸国と比較して未だ安い、アフリカ・中近東・インド・東南アジアへのアクセスが良い、しかも食事は海産物も豊富で日本人の口に合う(あまり辛くない)となれば、海外にあまり慣れ親しんでいない中小企業の初めての海外展開に打って付けと思いませんか。