国際オープンセミナーのご報告
永吉 和雄
3月3日、中小企業大学校東京校(東大和)にて40名の方々にご参加いただき、国際オープンセミナーを開催いたしました。今回は、「ビジネスの国際化とリスクへ対応」をテーマとして開催いたしました。私はビジネスの国際化は今やすべての企業にとって重要なテーマであると思っています。昨年、訪日客は約20%伸びて2860万人、日本に居住している外国人も230万人を超え、ビジネスを国際化していくことは身近な課題となっています。また、東アジア安全保障への危機感が高まる一方、世界経済の回復基調は続くと予想されています。グローバルな視点を持ったビジネスへの取り組みが今まで以上に求められる環境であると思います。
今回、講師として、豊富な国際ビジネス経験をお持ちの3名中小企業診断士の方々にお話しをいただきました。講演の主なメッセージをご紹介申し上げます。
第一講演 「リスクをチャンスに変える極意」
FMCフジタ・マネジメント・コンサルティング 代表 藤田 泰宏氏
藤田様には、トップバッターとしてご自身の総合商社時代のお話を交え、リスクについての体系的なお話をいただきました。海外出張時に身の危険にさらされた経験、日本とは文化・意識のレベルも異なる国でのリスク対応などご自身の経験についても、体系的に整理しながらのお話は大変興味深いものでした。藤田様からのメッセージは、「リスクのないところにはチャンスはない」「リスクを知り、対応力を磨けば怖くない」という、大変力強いものでした。たしかに、経営戦略や売上・利益計画はどの企業においてもしっかりと練られ、社員に共有されています。一方、リスク対応については、大企業においても後回しになりがちなのだと思います。リスクがあるからやめるのではなく、リスク対応をしっかりと行うことでチャンスを大きく拡げることができるのだと改めて感じました。
第二講演 間違いだらけの為替ヘッジ ~為替に負けない経営の秘訣~
岩橋グローバルコンサルティン(株) 代表取締役 岩橋 健治氏
岩橋様には為替リスク対応のお話をいただきました。岩橋様は、「ほとんどの企業は為替リスクを勘違いしている」と指摘されています。「為替差損を出していないから大丈夫」「売上が円建てなので当社には為替リスクは関係ない」といった理解はほとんどの経営者に共通のものであると思われます。例えば1個100円の商品を円建てで販売する場合、1ドル100円の時でも90円の時でも1個の販売代金は100円で変わりません。しかし、米国のお客様にとってみれば1ドル100円の時には1個1ドルで購入できたものが、90円になれば1.1ドル出さない購入できないことになります。当然、値引き要求をされるでしょうし、売上は下がると思います。商品を円建てで販売していても、為替の変動により売上が変動するリスクを負っているのです。岩橋様より「為替が変わった場合にはお客様と交渉してその半分を価格で調整する」といった対応をしている企業の例を紹介されました。「大切なことは、技術的なことだけではなく、為替変動に対応していかに売上を維持していくかである」とのメッセージにはまったくその通りであると感じました。
第三講演 海外実務でのリスク管理と異文化対応
多摩経営工房代表理事・(株)ワールド・ビジネス・アソシエイツ監査役 徳久日出一氏
徳久様はブラジル、米国、香港と通算で約25年間の海外駐在を経験されています。政治・経済環境、文化、言語も大きく異なる国でのご自身の経験に基づいたお話は大変に興味深く、参加者は徳久様の話に引き込まれていたと思います。徳久様のお話から、日本では起こり得ないようなことが多々起こり対応を間違うと大変なことになるのが海外ビジネスであり、また、早めの対応が必要であるのに本社に確認する必要があるとの理由で遅れて問題が大きくなってしまうことが多々起こるのも海外ビジネスに固有なものであると感じました。「十分に準備して臨むこと」「考えられるリスクには対応策を準備しておくこと」「何が大切かを把握すること」「覚悟を決めて対応すること」「相手の立場を想って対応すること」が徳久様からのメッセージでした。これは、藤田様、岩橋様のお話とも共通しています。また、国内外を問わずにビジネスを進める上で大切な基本動作であるとも思います。
講演後には名刺交換会、その後有志での懇親会の機会を持ち、ネットワークの強化を図りました。三多摩支部会員の皆様はもとより、他支部会員の方々、企業の方々との交流を図る大変よい機会となりました。
国際部では毎年2回、皆様のご関心の高いテーマを準備してオープンセミナーを開催しております。また、東京協会他支部の国際オープンセミナー等の案内もさせていただいています。是非、多くの方々にご参加いただければと思っています。
以 上