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経営者の方へ「販路拡大の方策:マーケティングとは」

2020-01-06

マーケティングとは

1.マーケティングの重要性

 売上が伸びない、伸ばしたい。誠心誠意込めて商品をつくっているのに、売上につながらない。競合が多く、価格競争が避けられない。こういったお悩みは多いでしょう。
 ご存じの通り、日本の人口は減少しています。また、世間はモノやサービスに溢れています。そんな時代ですから、お店を開けば人がくる、新しいものを作れば売れる、というわけにはいきません。あなたが作ったモノやサービスと、世の中に溢れているモノやサービスとどこがどう違い、どのようにお客様の役に立つのかを、お客様に正しく伝えていかないと、お客様の関心を集め購入につなげることはますます難しくなってきているのです。
 そこで重要になってくるのがマーケティングです。マーケティングとは「誰に、なにを、どのように」売るのかを考えて実行する一連の活動です。
 今回は、「誰に、何を、どのように」をヌケモレなく考えるために役立つ、マーケティングのフレームワークをいくつか紹介します。

マーケティングとは

2.購買行動の原理(AIDMA)

 まずは、お客様が購買行動にいたる感情の移り変わりを説明するモデルとしてAIDMAを紹介します。
Attention (注目)、Interest(興味)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、Action(購買行動)の頭文字を取ったもので、Action(購買行動)に至るまでの感情の移り変わりを説明したものです。

<AIDMA>
AIDMA

 たとえば通販の場合、TVCMの冒頭で、「〇〇の皆様」と呼びかけることで視聴者の「注目」を集め、「こんなお悩みはありませんか?」と質問を投げかけることで「興味」を持ってもらい、そこからお悩みの解決策を提示して「欲求」を促していきます。その場では購入しなかったとしても、再びTVCMや他の新聞広告・Web広告で見かけることで「記憶」が呼び起こされ、電話やネットでの注文という「購買行動」につながっていきます。
 実施するマーケティング施策(特に販促のための広告や商品説明)がAIDMAのどの段階のお客様に向けたものかを意識して実施していくことが大切です。

3.STPとは

 さて、お客様が行動モデルに沿って購買に至ることを説明しましたが、そもそも、お客様は自分のライフスタイルにあった商品やサービスでなければ「注目」もしてくれず、「興味」も持ってくれません。
 あなたの商品やサービスが「注目」され、「興味」を持ってもらうためには、あなたの商品・サービスがどんな人に向けたもので、他の製品とどこが違うのかを、お客様に知ってもらわなければいけません。そのためには、商品やサービスを開発する前に、誰に向けて、他とどんな違いがあるのかを整理しておく、つまり、「誰に、何を、どのように」売るのかを整理しておく必要があります。その第一歩となるのがSTPです。
 STPは、お客様を年齢やライフスタイルなど一定の基準で分類(セグメンテーション)し、その中から経営資源・強みを意識して狙うべきセグメントを決め(ターゲティング)、競合との差別化をするための立ち位置を決める(ポジショニング)。このセグメンテーション(Segmentation)・ターゲティング(Targeting)・ポジショニング(Positioning)の頭文字を取ったものがSTPです。

<「誰に・何を・どのように」とSTPとの関係>
STP

 再び通販を例にしますと、「健康に気を遣う中高齢」層をサプリメントの摂取に「積極的」「積極的でない」に分類(セグメンテーション)し、「積極的でない」セグメントに狙いを定め(ターゲティング)、サプリメントや健康食品の販売を強化する競合他社と差別化するために、普段の食事で必要な栄養を摂取できる調味料を提供する (ポジショニング)、といった形です。
 具体的なターゲットの選び方、ポジショニングの取り方は、それぞれのおかれた環境ごとに異なりますが、STPに沿って整理をし、狙いをはっきりさせることがマーケティング施策にとって重要になってきます。

4.4P

 STPでおおよその方向性が見えてきたら、あなたのターゲットに対するポジショニング、つまり「何を、どのように」の部分をより具体的に体現するために、ターゲットとなるお客様にはどんな「商品」を用意すべきか、どんな「価格」にすべきか、どんな「販路」でお客様に届けるか、そしてどんな「販促」を行うか、の4つのポイントを入念に検討していきます。
 この4つのポイントを Product(商品)・ Price(価格)・Place(販路)・Promotion (販促)の頭文字をとって4Pと呼びます。それぞれの検討項目は業界ごと様々ですが、重要なことは、あなたのポジショニングを強く意識しながら、ターゲットにあなたが何者か分かるように4Pの設計をしていくことです。

<「誰に・何を・どのように」とSTP・4Pとの関係>
4P

 先ほどの通販の例で考えると、商品は、必要な栄養分を凝縮した調味料を一食分ずつに小分けした30日分のセット。価格は3,000円。販路は全国向けの通信販売、販促は、「毎日の食事に混ぜるだけ!」をキャッチコピーに新聞・TVCM・インターネットを通じた宣伝と、HPでのオススメレシピの紹介、コールセンターの丁寧な接客、といった具合です。
 また、新規のお客様と獲得するコストよりもリピーターの方の再購入を促すコストのほうが安価、という話を聞いたことがあるかと思います。一度だけの購入でなく継続的なお客様とのつながりを意識して4Pの設計をしていくことも必要になります。
 通販の例でいうと、ロイヤルカスタマー限定の特別商品の案内、継続利用者への割引、VIP限定のイベント開催などが考えられます。

5.ブランディング

 ブランドは、会社名や商品名などのブランドネームと、ロゴや、デザインなどのブランドマークで形成されます。STPと4Pを計画する中でブランドネームやブランドマークは検討されると思いますので、ターゲットと自社のポジショニング、差別化された商品の特徴などを踏まえて一貫性のあるブランドを考えていくことが重要です。
 マーケティングの実行段階に入ると、ブランドはお客様へ発信するメッセージの象徴になります。商品の品質だけでなく、従業員のホスピタリティ、広告文の真摯さ、など全ての活動がブランドの醸成につながっていきます。日々の活動がブランドを作る、という意味では従業員のモチベーションアップ、スキルアップがブランディングの土台になる、といっても過言ではありません。

6.さいごに

 マーケティングは「人がいなくても売れる仕組みづくり」といわれることもありますが、マーケティングの実践に一番大切なものは「人」の気持ちだと思っています。
 絶対に人の役に立てる、という熱い思いをSTPや4Pに当てはめて考え、正しくお客様に届けられるよう整理していきましょう。

 新たな活動を行う際「若者、よそ者、バカ者」が原動力になる、という話を聞くことがあります。我々、中小企業診断士は、よそ者として、事業者様の想いを伺い、情報整理して見える化することで、新たな活動のお手伝いをいたします。
 三多摩支部ホームページには以下の会員紹介のページがございますので、お悩みにマッチした専門家をお探しの際は、ご活用いただければ幸いです。 
https://www.santama-smeca.jp/memberinfo

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≪執筆者紹介≫
石垣 佳孝(いしがき よしたか)
法政大学卒業後,商社に勤務。法人営業経験後、ECサイト運営会社に転職。事業開発からサイト運営まで幅広く経験。その後、生命保険会社にてダイレクトマーケティングに従事。2018年 中小企業診断士登録。企業内診断士。
(HP:http://www.ishigakibunkacenter.com

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