経営者の方へ「販路拡大の方策:広告・広報PRについて」
広告・広報PRについて
1.広告・広報PRの役割
まずは、マーケティング活動の中での広告・広報PRの位置づけを説明します。
マーケティング活動は、差別化された商品を、適正な価格で、ターゲットが多くいる販路に向けて、販促活動を通じて届ける活動です。このうちの販促活動は、「集客の活動」「検討促進のための活動」「購買促進のための活動」の3つに分けられます。広告・広報PRは、この「集客の活動」にあたります。
<マーケティングの中の集客>
小売業やサービス業で言えば、広告・広報PRなどで「集客」し、お店の雰囲気や商品の探しやすさ・選びやすさなどの工夫で「検討促進」し、商品POPやポイント還元、丁寧な接客などで「購買促進」する、と販促活動は一連の流れになっています。
一連の流れの一部、ということですから広告・広報PRで発信されるメッセージは、販促活動を通じて一貫したものであるべきです。さらには、販促活動はマーケティング活動の一部でもありますから、マーケティング活動全体を通じて一貫したものでもあるべきです。
どこかで見たデザインがカッコよかったからと言ってすぐに飛びついて真似をしたりせず、自社のマーケティング施策・販促施策に従って広告・広報PRを展開するように注意しましょう。
2.広告・広報PRの違い
広告と広報PRの違いを簡単に説明すると、広告はお金を払って新聞・雑誌などの媒体に露出するのに対し、広報PRは無料で記事を書いてもらって露出する、という点で異なっています。
それぞれのメリット・デメリットを整理すると、広告は、意図した内容で必要な露出を確保することができるため、計画的な集客ができる点がメリットで、費用がかかる点がデメリットです。一方で広報PRは、費用が安価な点と、メディアによる紹介であるため広告よりも信頼感を得やすい点がメリットで、実際に掲載されるか、好意的な内容で紹介されるかが不明瞭で、意図したとおりに情報発信できない点がデメリットになります。
3.効果の考え方
効果測定は、その媒体でどれだけ露出(リーチ)したか、どれだけ集客できたか、どれだけ購買につながったか、の3点で行います。広告の場合はとくに、費用対集客数と費用対販売件数など、かけたコストに対して結果がどうだったか、という点にも注目して効果測定を行います。
<効果測定のポイント>
広告は、一度や二度の出稿で満足のいく効果を出すことは難しいものです。行き当たりばったりで広告を出稿すると失敗しやすく「やっぱり広告は高いだけでダメだった」ということになってしまいます。きちんと計画し、目標とする効果を出せるようになるまで育てる、という意識で取り組まなければ成功の可能性が高まりません。広告は人を育てるのと同じ、と考えて少し長いスパンで取り組んでいくことをおすすめします。
4.広告の実践
広告を検討する際は、テレビ、新聞・チラシ、雑誌、ラジオ、看板などの交通広告、Web広告などから、自社のターゲット層にアプローチできそうな広告媒体を、媒体社の資料や広告代理店の説明をもとに検討・選定します。競合他社やベンチマークしている他社の事例などを参考にするのも良いでしょう。
将来的には、クロスメディアといって複数の広告媒体に露出することで相乗効果を狙いたいところですが、はじめて広告出稿される場合、まずは出稿する広告媒体を1つか2つに絞り、その広告で効果が十分な状態になるまでPDCAを回していきましょう。十分な効果が得られ、十分な利益を獲得したところで新たな広告媒体へのチャレンジを検討していくことをおすすめします。
5.広報PRの実践
広報PRも広告と同じく、自社のターゲット層に合いそうな媒体の選定からはじめますが、広告と違うのは、媒体社への売り込み活動が必要になる点です。
媒体社が探している情報は「変化」や「違い」です。新しい製品や珍しい取り組みなどを、プレスリリースとして作成し、媒体社への提供を続け、目に留まるよう活動していきましょう。また、最近ではSNSでの情報発信が媒体社の目に留まることもあるようですので、日ごろから活用していくと良いでしょう。
広報PR活動は、媒体社の担当者とパイプを強化していくことがポイントになります。コツコツと媒体社へ向けた情報発信を続け、ときにはどんなネタが欲しいかなど、聞いてみるのもよいでしょう。
6.Web広告
Web広告は通信の高速化・大容量化、スマートフォンの普及に伴い拡大をしています。現在、Web広告の購入の仕方は、入札タイプのものが主流になっています。検索サイトの検索結果ページに表示される広告や、ニュースサイト・SNSに掲載される広告など、主要な媒体はこの入札タイプの広告になっています。使いこなせば集客力アップにつながりますので、ぜひ活用いただきたいと思います。
入札タイプのWeb広告の仕組みは、広告掲載面のあるページに誰かがアクセスをする度に入札が行われ、広告が表示されるというものです。広告主としては、バナーやコピーなどの広告の内容と、配信先、入札する額をあらかじめ設定しておきます。
1クリックあたりに支払う最高金額を設定しておくのですが、設定額が高いから表示されるというわけではありません。様々な要因で入札の勝ち負けが決まります。
<入札タイプのWeb広告 仕組み>
月の広告予算は小額からでも試すことができます。効果測定をしていくためには5千円か1万円からはじめていただきたいですが、例えば100円からでも始めることは可能です。また、実際の支払いはクリック課金タイプが主流です。「クリックされた回数×クリック単価」を支払う形になります。月の予算までクリックがされると、その月は広告が表示されなくなります。
Web広告は蓄積されたデータを活用して、セグメントを絞ることもできます。年代・性別や趣味嗜好・行動パターンなどでセグメントを分け、ターゲティング広告を配信することが可能になっています。
また、効果測定が容易にできますので、広告の配信先、バナー、広告の受け皿となるページの改善につなげやすい点も特徴のひとつです。
<入札タイプのWeb広告 3つの特徴>
7.さいごに
「年度の予算が余ったから試しに広告をやってみたけど、あまりうまくいかなかった。」といった経験はあるのではないでしょうか。広告はお金をかけたからといってそう簡単にうまくいくものではありません。広報PRもですが、マーケティング全体を計画し、一貫したメッセージをコツコツと発信しながらPDCAを回していく必要があるものです。
中小企業診断士は、情報を整理して見える化することで計画立案などのお手伝いをしております。経営戦略から組織づくり・人事・マーケティング・生産管理、など様々な分野の専門家がおりますので、お困りごとがあれば、三多摩支部ホームページの以下の会員紹介のページをご活用いただければ幸いです。
https://www.santama-smeca.jp/memberinfo
≪執筆者紹介≫
石垣 佳孝(いしがき よしたか)
法政大学卒業後,商社に勤務。法人営業経験後、ECサイト運営会社に転職。事業開発からサイト運営まで幅広く経験。その後、生命保険会社にてダイレクトマーケティングに従事。2018年 中小企業診断士登録。企業内診断士。
(HP:http://www.ishigakibunkacenter.com)