経営者の方へ「経営者であるために:良いコーチを持つこと」
良いコーチを持つこと
1.はじめに
経営者は孤独であるとよく伺います。会社の経営には、目的・目標に向かって正しい決断と行動力が必要です。従業員に弱いところは見せられない。社外の方々にも苦境は悟られたくない。でも誰かに相談に乗ってほしい。社内に良き理解者がいれば大変心強いです。しかし、上下関係や社歴が影響し相容れないことが多いのではないでしょうか。
そんな時は、気づきを与えてくれる理解者として良いコーチを持つことをおすすめします。
2.良いコーチに出会う
(1)コーチの役割
コーチは、経営者が目指している方向や達成したい目標に対して、ものの見方や考え方を経営者自身に気づかせ、解決先が実行されていくのを一緒にサポートする役割を果たします。すでに認識されている明確な課題に対する解決先を提示し、解決策に基づき実行をうながすものではありません。コーチは経営者に「気づき」を与え、一般的にいう「腹落ちした」状態になることで納得して経営者が自主的に実行に移していくための理解者と言えます。ではどこに行けば良いコーチに出会えるのでしょうか?
(2)コーチの候補
創業前や事業の立ち上げ期は、身近な存在である親や友人に相談することで達成したい目標や行動が明確になることもあります。しかし、ビジネスが進むにつれて発生する課題に対して身近な存在の方が経営そのものに対する知識や経験が豊富であるとは限りません。
頼りになる第三者の存在のひとつとして、商工会・商工会議所があります。商工会・商工会議所には長年の経験と豊富な知識を持つ経営指導員がおり、創業支援や販路拡大など長いお付き合いを通して経営相談に乗ってくれます。
融資先の金融機関から紹介を受ける士業(公認会計士、税理士や中小企業診断士等)の先生も候補です。金融機関によっては無償で数回の支援を行っており、お互いの考え方を把握しながら活動するため、その後のコーチとして支援をしてもらう良い機会になります。
また、地域によっては創業、事業継承支援や経営支援を行う機関があります。東京都あきる野市の「あきる野創業・就労・事業承継支援ステーションBi@Sta(ビスタ)」や埼玉県狭山市の「狭山市ビジネスサポートセンター」などです。それぞれの機関には商工会議所や金融機関との連携を通じて適切な経営支援を行っている中で、多くの士業の先生が携わっています。特に中小企業診断士は、会計、特許取得や労務管理など専門家に対する相談役やコーディネーターとして、経営者の課題をともに解決する活動を行っていますので良いコーチの候補となります。
(3)良いコーチを選ぶ4つのポイント
①うなずき、認めてくれる: | 信頼関係を築くうえで、経営者のおかれている立場や考え方に理解を示し、協力できる相手であるかを確認します。 |
②しっかりと聴いてくれる: | 先入観をもたず、否定をせずに最後まで話をきいてくれ、心地良さからくる安心感がうまれるかを確認します。 |
③的確な質問をしてくれる: | コーチが確認したいことを質問するのではなく経営者のために質問をし、気づきを与えてくれるかを確認します。 |
④フィードバックしている: | 会話の真意を汲み取り、発言された言葉を使ってまとめて |
4つのポイントを踏まえながらも相性といった感覚的なものもあります。経営に関する知識や経験を持ち合わせていることは基本として、コーチとしての立ち振る舞いや言葉遣いの相性も考慮しながら良いコーチを見つけるとよいでしょう。
3.事例
A社は、東京都千代田区に本社をおき、はかりなどの測定器販売や医療機器の販売をしている従業員20名程度の企業です。5年前に2代目の父親から娘(現社長)に事業継承した後、営業未経験の現社長の不安を解消するため、メインバンクに相談して、経営アドバイザーを派遣してもらいました。
経営アドバイザーは、定期開催の営業会議に訪問し、「目標達成のために、どのような活動を行ったのか」「どうするとよい方向になるか」など考えさせることを主眼において目標達成に貢献する活動を終えます。支援内容に安心感をもった社長は、その後も経営アドバイザーに支援を仰ぎます。
現在は毎月定期訪問し、社長の不満、不安、不足している事項を確認しながら社長の方針や活動の後押しを行っています。ときには第三者の目として従業員に個別面談を行って社長の方針が良い方向に向かっているのか否かを把握しています。経営アドバイザーが会社の経営状態を的確にとらえ、社長の良いコーチとして活動しています。
4.おわりに
経営の最終決断は経営者が行います。うまくいっても、うまくいかなくても不安や不満は消えません。既存のビジネスを堅固に守り、会社の未来を創造していくには経営者とともに並走してサポートできる良いコーチを持つことで、経営基盤が盤石になる可能性が高まります。東京都中小企業診断士協会三多摩支部には経験豊富な中小企業診断士が在籍しております。ぜひご連絡頂けると幸甚です。
≪執筆者紹介≫
石川 達也(2017年中小企業診断士登録)
コンピュータメーカーおよび情報システム構築企業で法人営業を長く経験した後、経理、管理会計や取締役の意思決定支援にかかわる業務に従事。現在は中小企業に勤務し、社長の理解者になるべく汗をかきながら、経理と社内業務改善を行っている。