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コロナと国際ビジネス

2020-07-31

三多摩支部 永吉和雄

 

新型コロナウィルス感染拡大(コロナ)の影響を受け始めたのは本年2月頃からですので、もう半年間コロナを気にしながらの活動になっています。三多摩支部国際部で企画していた国際オープンセミナー(3月14日予定)の延期を決めた時には、6月にはコロナも収束して開催できるだろうと考えていたことを覚えています。考えが甘かったのは私だけではないと思います。ここまで影響が大きくなるとは想像もしておらず、東京オリンピックの開催は予定どおりできるものと思っていました。コロナは長引くとの覚悟ができてきたのは4月頃だったかと思います。多くの中小事業者の方々は、セーフティーネット保証、休業補償金、持続化給付金等の緊急支援策を使い事態に対応しwithコロナの経営に本格的に取り組みはじめました。中小企業診断士の支援もwithコロナ対応、afterコロナに向けた準備が重要な支援のテーマになっています。

 

長期的には重要な中小事業者のビジネスの国際化

このような中、国際ビジネス環境は急変いたしました。国際間の移動は大きな制限を受け、訪日外国人客は急減し、観光関連産業は深刻な影響を受けています。また、多くの国際的事業、プロジェクトが中止、遅延となる等、世界中が混乱しています。一方、長期的に見ると、中小事業者にとって国際化は大変身近になってきておりビジネスの国際化への取り組みは、今後も重要な課題であり続けると思っています。「一緒に働く仲間」として、「商品を購入するお客様」として、「生産の一部を担う協力企業」として、企業活動の様々な分野で外国人のお世話になっています。このことはafterコロナでも変わらないことだと考えます。

 

長期化が予想される国際間の移動制限

ただ、国際間の移動が昨年までのように自由にできるようになるまでは、何年かかるかわからない状況です。IATA(国際航空運送協会)は、7月28日に、世界の航空需要がコロナの影響を受ける前の水準に戻るのは2024年になるとの見通しを示しました。5月の予測では早ければ2023年としていましたが、需要回復に遅れるが見られるとして、回復基調に入る時期を1年後ろ倒しにしました。足元の落ち込みは今までになく厳しく、4月の旅客輸送量(有償旅客キロ)は前年同月比で94.3%減少し、5月91%減、6月86.5%減、となっており回復はごくわずかです。2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件後の落ち込みが過去最大でしたが、2割程度の落ち込みであったことを考えると今回の深刻さが理解できます。

世界の航空旅客輸送量

現在、ほとんどの国で厳しい入国管理が行われています。「海外からの入国者は原則2週間隔離する」等の管理を行っている国がほとんどかと思います。また、今後自由化に向けて、「トラベルバブル」という、2か国間、3か国間で移動を認めようとする動きがありますが、実現には厳しいハードルがあると思います。なぜなら、コロナへの対応が各国でまちまちであるためです。コロナ対応よりも経済回復を優先するブラジルもあれば、わずかでも感染者がでればロックダウンに近い行動制限をするベトナムもあります。政治的、経済的な関係も考慮されるものと思われますので、大変複雑になります。

 

afterコロナに向けた国際ビジネスの方向性

国内では、コロナ対応として接触を避けるための対策が進みつつあります。飲食業界で「中食」の動きが進み、店舗では感染防止策をとった上で席数を減らして営業する等の努力がされています。テレワークが推奨され、会議もオンラインで行われることが一般的になりました。そのような中、オンラインでのコミュニケーションが大変に有効であること、会わなくても進む仕事がいかに多かったかを、多くの人が驚きをもって認識したことと思います。

今後、人に会うことは特別な機会になっていくものと思います。「話しをするために人が集まる飲食店」には人が戻ってくると思いますが、「中食」はトレンドとして増えていくものと思われます。また、出張して会議に出席することが当然としていた会社の多くは、オンライン会議に切り替えていくことになるでしょう。

ビジネスの国際化に関しては、「外国人訪日客を取り込むためのインバウンド対応」、「展示会・商談会を活用した現地販売」が、昨年までは中小事業者の国際化戦略の中で一般的なものでした。移動が今までのようにできない状況では、少なくともこれから何年かは進められるとは思えません。展示会に出店し、その後短期出張を繰り返し現地顧客・協力者との関係構築をしようとする従来のやり方は、今の環境に合わせたものに変えていく必要があります。また、afterコロナで今までと同じやり方でいいのかを、見直す良いタイミングであると思います。「オンラインで外国にいる方にいかに魅力を知ってもらい販売するか」、「オンラインで自社の強みをいかに伝え取引先を開拓できるか」等がますます重要な課題になってくると考えられます。

 

今後の国際ビジネスの機会

国際ビジネスにおいても、オンラインでのビジネスマッチングが進むと思います。今まで、中小事業者や小規模事業者の方々が海外展開に踏み出す際のハードルになっていたのは、時間とお金だと思います。オンラインでの活動が中心になれば、海外出張の時間、旅費等がかかることはなくなり、より多くの事業者が国際ビジネスに取り組むことができるようになると思います。

海外展開が必要なことはわかっていても、社長が出張の時間をとれない、そのための社員を雇う余裕もない、という話を何度もお聞きしたことがあります。そのように言われていた事業者の方々も、世界で通用する強みを必ずお持ちです。事業者の方に、自社の強みをしっかりと認識してもらい、国際化対応のための課題をしっかりと整理していただき、自社からオンラインでグローバルなビジネスに取り組んでいただければ大変うれしいです。また、中小企業診断士として、そのような事業者の方々の国際化の努力を、しっかりと支援していきたいと考えています。