インドで、日系企業の集まる街「グルグラム」からの緊急帰国
三多摩支部 城ヶ﨑 寛
緊急帰国報告
2020年3月下旬 新型コロナ感染症の全世界での拡がりをうけて、インド国でも国内交通手段の限定運用や不要不急の外出禁止措置が迫る中、全国的な規制がとられる直前に緊急帰国いたしました。その当時インド国内では新型コロナ感染症の患者の数は3月20日時点で249名、それに対する日本の患者数1007名で、インド国内の患者数が目立って大きい数字ではありませんでした。
直前の業務時間外に妻に頼まれ宿泊するホテル近郊のスーパーマーケットにアユールヴェーダ商品を購入に行き、カバンに詰め込めるだけ購入しましたが、重量制限があるため、購入できる数にも限界がありました。
また、直前にインドの電話会社のSIMカードを入れて、ローカルの電話として活用していたiPhoneを見失っており、予備用の機器として持参したiPadより、iPhoneを探すという機能でいつも活用している車が駐車している駐車場にiPhoneがあることを確認しており、出発当日に車の管理会社に頼んで見つけてもらっていました。
インドにおける日本企業(製造業を中心として)
私の滞在していたグルグラムは、インドの首都ニューデリーの南西部約30kmに位置し、人口は約260万人(2017年時点)でハリアナ州に属しますが、少し南のラジャスタン州のニムラナ地区には日本企業専用工業団地もあり、後楽園球場約100個分の土地に州政府が開発した工業団地を、日本企業専用に提供しています。
ニムラナ地区の日本企業専用工業団地には、2018年4月現在、日本電産(モータ)、不二越(車両軸受)、ダイキン(空調機器)、ユニ・チャーム(おむつ衛生用品)など40社以上の企業が入居しております。このため、グルグラムを含むこの地域には、日本料理店や長期滞在用のサービスアパート、短期滞在用の日本人専用ホテルなども充実していていますので、カレー風味(現地ではマサラと呼びます)の料理の毎日に疲れてきたら一服できる環境が整っています。
私は当初は現地資本の一般的なビジネスホテルに宿泊していましたが、和食と、大浴場を備えた日本人専用ホテルの特別価格の魅力に負けて数回お世話になりました。このホテルのオーナーは日本人で、料理を作るのは日本のホテルで経験を積んだシェフでしたので、ホテル滞在時間帯の食事は、ホテル内居酒屋での飲み会含めて純日本風でした。
このホテルの宿泊客はほぼ日本人のみであり、一日の仕事を終えてホテルに到着すると、一時的に日本に戻っているかのような不思議な感覚を味わいました。
インドでの生活上の注意点
ここからは、少し現地の生活上の注意点について触れてみたいと思います。
現地の6月から10月は雨期で、激しい雨が降り出すと、道路が川のような状態となり、道路の側溝やでこぼこが見えなくなります。このため、日本企業の送迎になれた英語を話せるベテランの運転手でないと危険です。タクシーや、人力車に原点を持つ3輪車である「リキシャ」も町を走っていますが、基本的に英語で話ができませんし、運賃は交渉となります。近年インドでもUberや現地資本のシェアリングサービスが充実してきており、言葉の必要性は減っています。しかし、きちんとおつりを出してこないドライバーに対応するために、キャッシュレス決済をするためには、現地の銀行口座を持っていなければ対応できないため、現地通貨の小銭が手元に十分にないときには利用しづらい環境です。
街中では洋服や、スマホ等の高級品を扱うような店舗でなければ、基本的に英語は通用しないと思った方が良いでしょう。現地の言葉で会話が交わされるため、出身地の異なるインド人だと、会話もできないことがあります。ですので、現地の知り合いのインド人でも頼りとならないケースがあります。ヒンディー語は憲法で定められた22の公用語のひとつで、基本的にニューデリーを中心とした、北部でしか通用しません。ヒンディー語を話せる人口は約5億人、英語を話せる人口は約1.2億人といわれていますが、人口12億人全体から見ると、それぞれ4割、1割を占めるに過ぎません。インドの英語は旧宗主国である英国から学んだ英語で、語彙、発音が独特の“ヒングリッシュ”と呼ばれる英語です。日本人が社会人として学んだ米国でよく使われる英語とは全く異なる言葉と思った方が良いです。簡単な挨拶くらいは通じますが、仕事上の複雑なやり取りを問題なくこなすようになるには、少なくとも半年以上のインドでの実務経験が必要です。
それから、基本的に日本人と話をするような経営幹部は、お酒を飲みません。宗教上の規範とされている「マヌ法典」によって、酒を飲むことは「五大罪」のひとつとされているからです。ですので、夜の会食においても、よっぽど日本人慣れをしている人でなければ、一緒にお酒を飲むことはないですし、レストランで飲むビールの値段は日本よりも高い場合がありますので、要注意です。
基本的にはまじめな人が多いので、いくつか重要なポイントを外さなければ、日常生活およびビジネスにもあまり困ることはないと思います。インドビジネスはこれから日本企業にとって重要な部分を占めることは必定です。日々新しい発見のあるインドビジネスの世界に是非ご一緒に踏み出しましょう。