コロナ禍の海外赴任(南米パラグアイへ)
三多摩支部 池上 恵美
皆様、南米の国、パラグアイをご存知ですか?地球の反対側ではありますが、実は南米でも有数の親日国として知られています。私はこのパラグアイにこの9月から長期赴任することとなりました。これを機会に、日本にいると馴染みの薄いパラグアイについてご紹介すると共に、コロナ禍での渡航はどのようなものだったか、ご参考までにお伝えしたいと思います。
1. パラグアイについて
パラグアイ(正式名称:パラグアイ共和国、Republic of Paraguay)は、南米の中央に位置する国です。面積は40万6752平方キロメートル(日本の1.1倍とほぼ同規模)、人口は約696万人(2018年、世銀)、公用語はスペイン語と先住民族の言語であるグアラニー語です。主要産業は、農業、牧畜業(牛肉)、林業といった第一次産業が中心で、中でも大豆は世界の輸出量第4位、また牛肉は世界第8位の輸出国でもあります(外務省基礎データより)。
近年は外国からの投資誘致を積極的に進めた結果、2006年~2015年の平均経済成長率は「5.1%」、2018年の経済成長率は「3.6%」と南米の中でも高い数字を維持しています。外国からの投資誘致策には主に2つの柱があり、1つ目は「法律60/90号」、2つ目は「マキラ制度」と呼ばれるものです。1つ目の「法律60/90号」を利用して投資を行えば、事業に必要な資本財・原料などの輸入関税、資本財の購入にかかる付加価値税、会社設立にかかる付加価値税などが免除されます。また、国外からの500万ドル以上の投資の場合、配当金などの海外送金にかかる諸税が免除されます。
2つ目の柱である「マキラ制度」は、パラグアイに製造拠点を設立することで大幅なコスト削減を可能とする制度です。予め契約した国外企業から資本財・原料などを用いて、契約相手先の国内企業が生産・修理などを行い、それを輸出することで諸税が減免されます。減免の対象は、(1) 生産に必要な資本財・原料などの輸入関税保税、(2) 単一税以外の全ての税の免除、(3) 原料などの購入に際して支払った付加価値税の還付です。
これらの投資誘致策等を利用したコスト削減に、隣国のブラジルが高い関心を寄せているほか、最近は日系企業も進出しています。自動車電装事業を手掛けるフジクラや矢崎総業がパラグアイに工場を設立し、自動車用ワイヤーハーネスのブラジル向け輸出を行っています。
(以上について、ジェトロのビジネス短信から多くを引用しました。詳細はこちらをご覧ください。https://www.jetro.go.jp/biznews/2014/01/52d615f44f970.html )
2. 日本とパラグアイのつながり
パラグアイは南米有数の親日国としても知られています。その由縁は、約80年前に移住した日系人の方々の功績によるところが大きいです。パラグアイへの日系人移住は、1936年に始まり、1959年の移住協定のもとでその数が増加しました。農業従事を条件に移住した日系人の方々はパラグアイで大豆の生産に着手し、耕地の開拓、大豆と小麦の機械化営農の進展、畑の土壌流出を行わない不耕起栽培という農法の導入などにより、その生産量の増大に大きく貢献をしました。これにより、今日では大豆が世界の輸出量第4位となっていることは上述のとおりです。パラグアイの経済発展に大きく貢献した日系人の方々、ひいては日本という国に対し、パラグアイ側からの感謝と親愛の情はやまず、今も強い友好関係を構築しているのです。なお、パラグアイには今も約7,000人の日系人の方々が居住しています。
(移住史はこちらもご覧ください。「在パラグアイ日本国大使館ホームページ」 https://www.py.emb-japan.go.jp/itpr_ja/nikokukan-kankei.ijyushi.html )
3. コロナ禍での海外渡航
そんなパラグアイに、JICAの事務所員として2020年9月から駐在することとなりました。航空便が限られるなか、パラグアイ政府の手配する臨時便に搭乗できることとなり、9月18日に日本を発ち、飛行機を3つ乗継いで、丸2日後に首都アスンシオンに到着しました。経路は、「成田空港→アムステルダム→マドリッド・・・マドリッドで1泊・・・アスンシオン」となります。
通常、海外出張をするときは、成田空港の賑わいに囲まれながら、出国への高揚感を高めたものですが、お店は閉鎖中。免税店に至っては事前予約が必要とのことでした(写真は閑散とした成田空港です)。
少しさみしい旅立ちであり、飛行機の乗継時には健康確認や厳しいセキュリティチェックに何度も対応し、疲れ果てた末にパラグアイに到着したときは感慨ひとしおでした。何より、パラグアイ人がとても温かく優しかったのです。荷物を運ぶのを手伝ってくれたり、何か困ったことはないかと声をかけてくれたり・・・アジア人というとこのご時世、心なしか冷たい視線を旅程中に感じることもあったので、パラグアイ人の優しさは身に染みました。
なお、こちらの写真は、ホテルから見た首都アスンシオンの景色です。パラグアイでは民間連携を担当する予定であり、また、日本の中小企業進出も促進したく、ぜひ今後も三多摩支部の皆様と情報交換などできますと幸いです。
4. 日本の企業からの協力が期待される途上国の開発ニーズ
最後に、私が所属するJICAでは中小企業の海外展開支援を積極的に行っております。日本の中小企業からの協力が期待される途上国の開発ニーズについて、以下のサイトで情報公開をしておりますので、ご関心のある方は、国や分野といった切り口でぜひ検索してみてください。
「JICAホームページ:民間企業の製品・技術の活用が期待される開発途上国の課題」https://www.jica.go.jp/priv_partner/case/reference/subjects/index.html
以上