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経営者の方へ「事業承継・世代交代:専門家の助言」

2021-03-13

専門家の助言

 経営者は、いつか「引退」する日が来ます。そして同時に「自分が引退した後の会社」のこと、つまり「事業承継」を考えなければなりません。しかし、ほぼ全ての方が事業承継初体験です。人生もベテランの域に入り事業承継の必要性を感じていても「どうしていいのかわからない」、「日々の経営で忙殺されていて」、という方も多いのではないでしょうか。
 そこでお勧めしたいのは、できるだけ早期に専門家に相談して助言を得ることです。

「事業承継」って何をすれば良いのだろう?

 下の図をご覧ください。一言で事業承継といっても、これだけ沢山のことを引継がなければなりません。

事業承継の構成要素
図1 事業承継の構成要素(事業承継マニュアル,中小企業庁)

 「息子に『お前に任せる』と言えば済むのでは?」と思われるかもしれませんが、後継者としての育成をしなければなりません。ご子息が会社の全てを把握している訳ではないので、整理して引継ぐ必要があります。
株式を譲るとして、その具体的な進め方も考えなければなりませんし、後々の相続とも関係します。

 下図は、経営者の引退後の選択肢を表していますが、Ⅱ役員・従業員承継の場合は、借入金・債務保証の引継ぎや、株式の譲渡がネックとなるケースが見受けられます。

事業承継の構成要素
図2 経営資源引継ぎの概念図(中小企業白書2019)

 Ⅲの社外への引継ぎでは、仲介機関の選定や売却条件の検討も必要です。

 これだけ盛り沢山のことをどのように進めればよいのでしょうか。図3は事業承継を進める手順を示しています。後継者に関わらず共通して、まずは「プレ(事前)承継」から始めることがわかります。

事業承継に向けたステップ
図3 事業承継に向けたステップ(事業承継ガイドライン,中小企業庁)

 図1でご覧になった引き継ぐべき資産、知的資産の棚卸しをして、必要に応じた経営改善をします。後継者が決まっている場合は後継者教育にも着手します。
 「経営改善」に違和感があるかもしれませんが、引継ぎを行う前に資産や事業内容を整理したいと希望されるケースが多々あります。個人資産と会社資産が曖昧な部分の整理や、かつて多角化で手を付けたが今は不要な事業の片づけといった事です。
 事業承継計画、M&A、後継者育成については、別のコラムもぜひご覧ください。

誰に相談するべきか

 中小企業白書2019によれば、経営者の引退に向けた相談相手の筆頭は近しい人で、「家族・親族」が5割、後継者が4割です。次いで、外部専門機関・専門家への相談が3割となっています。(重複回答)
 専門機関・専門家の内訳は下図のようになっています。

事業承継に向けたステップ
図4 相談先の専門機関・専門家(中小企業白書2019)

 公認会計士・税理士が最も多く、事業承継した経営者の7割、廃業した経営者の9割が相談しています。例えば顧問税理士のように常日頃から接している専門家等であることから、話をする機会を得やすいということが大きいようです。また、公認会計士・税理士は、財務や税務に関する専門家ですので、図1の「資産の承継」や相続に関する的確なアドバイスが期待できます。

 銀行は、資産に関するノウハウの他、社外の引継ぎ先を紹介する力をもっています。弁護士は、法律面が課題となる場合に頼りになります。事業承継と相続が複雑に絡んだ場合やM&Aの契約等です。社会保険や労務の専門家である社会保険労務士は、それらがネックとなった場合に力を発揮します。

 私達、中小企業診断士は、直接ご相談を受けることもありますし、商工会議所・商工会における専門家として、あるいは銀行からの派遣専門家等として事業承継に対応しています。経済産業省所管の唯一の国家資格を有する経営コンサルタントですので、事業承継の計画作成、プレ承継段階や全体調整を得意としています。守備範囲が広いので、承継が漠然としていて選択肢に迷う場合や、後継者教育を含めて次代の経営を考えたい場合等も対応できます。税務、法務の専門家とチームを組むこともあります。

最初の一歩は、いつ、どこで

 準備に必要な期間は、個々の企業の状況によって大きな差があります。クリアしなければならない課題が多いほど時間が掛かります。例えば後継者の教育には5年以上掛かるといわれています。中小企業白書2019によれば、引退決意から引退までの期間は3年以内が約7割ですが、準備期間が短いほど承継の時間不足を感じる経営者が多く、「数年間をみる必要がある」と推奨しています。

 また、東京商工会議所の調査(2018年)によれば、後継者が30代のときに承継した企業が最も業況を拡大しており、調査レポートでは「現経営者の年齢だけでなく、後継者の年齢も勘案して承継時期を決めるべき」と指摘しています。いずれにしても、早め早めの対応が必要です。

 相談先はご家族などの近しい方も重要ですが、それに加えて、必ず専門家の助言を受けてください。懇意な顧問税理士からアドバイスを受けることも有効です。ただし、各専門家にも得手不得手がありますので、その点を留意の上、必要に応じて適任者の紹介を依頼してください。
 身近な相談先として、商工会議所・商工会があります。こちらは、無料相談やセミナーなどの支援策を実施しておりますし、課題に応じて専門家を紹介しますので専門分野を気にする必要がありません。

 また、図4にもありました「事業引継ぎ支援センター」「よろず支援拠点」という公的な場所があります。支援センターは、経産省が運営する第三者承継(M&A)に特化した相談窓口で、東京都では東京丸の内と立川にあります。よろず支援拠点は中小企業庁が設置しているワンストップ(全分野対応)窓口です。
イラスト

 「まだ窓口に行くのは気が引ける」、「情報だけでも」、という方には「事業引継ぎポータルサイトhttps://shoukei.smrj.go.jp/」があります。中小企業庁運営の事業承継サイトで、動画などを使って承継に関する様々なことを、わかりやすく解説しています。三多摩支部の「何でも経営相談室」もご活用ください。
 事業引継ぎポータルサイトにもこう書いてあります、「早めの準備」と「計画的な取組」。これが肝心!思い立ったが吉日、できるだけ早く専門家に相談してみてください。

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千葉 俊彦(インテグロ中小企業診断士事務所)
中小企業診断士/技術士/事業承継アドバイザー/健康経営エキスパートアドバイザー
都市・交通計画のコンサルタントとしてバスタ新宿等のプロジェクトに従事。企画畑に異動し新事業開発の責任者等を経て役員となり、中小企業のM&Aを含め経営全般を10年超にわたり実践。経営者の悩みを共感できる“企画系なんでも屋”のキャリアを活かし多様な事業承継案件にも対応。
「会社を元気にする地に足のついた実践的なアドバイス」が信条。(HP:https://www.integro-mco.com

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