経営者の方へ「創業:ビジネスモデルの考え方」
ビジネスモデルの考え方
1.ビジネスモデルとは?
ビジネスモデル、と聞いて、どのようなイメージをお持ちでしょうか?ビジネスモデルは、さまざまに定義されています。
「マーケティングとは」のセクションで「誰に、何を、どのように」を考えることの重要性が書かれていますが、ビジネスモデルもこの要素が大切です。ビジネスモデルとは、【誰に】お客様に、【何を】自社の価値を、【どのように】自社の強みを活かせる方法で生み出し届け、それによって【対価】を得る、利益を上げる「仕組み」と考えます。またビジネスを継続していくために、ビジネスモデル検討時の前提条件として、以下を考える必要があります。
・実現可能性:
自社のリソース、パートナーとの協業により価値提供が実現可能であること。実現するための組織が存在し、業務オペレーションの運営が可能であること。
・競争優位性・回避性:
自社の強みを活かせ、同業他社より優位性がある、あるいは競争回避できること。
・継続性:
事業を継続でき、顧客との関係性を維持できる等、継続性があること。
・循環性:
顧客からのフィードバックを得て、自社の商品、サービスを改良し提供し続けていく循環していく仕組みがあること。DXの重要性が強調される今、スマホ、インターネット等を介し、お客様と繋がり続ける重要性はますます高まっています。
2.ビジネスモデルの例
ビジネスモデルは、【誰に】【何を】【どのように】が異なることで、また技術進化や顧客のニーズの変化などの外部環境の変化により、適切な形が変わっていきます。ビジネスモデルをパターン化し紹介している書籍も複数存在します。1からビジネスモデルを考えるのではなく、異業種も含めてすでに導入されているビジネスモデルを参考にすることも有効です。トヨタのジャストインタイム方式はアメリカのスーパーマーケットをモデルにしたといわれています。
ここでは例としてD2Cとサブスクリプションという二つのビジネスモデルについて説明します。
2-1 D2C(Direct to Consumer)
D2Cは、店舗を持たず、SNSやWeb広告などにより顧客を獲得し、ECサイトで直接顧客に商品を販売するモデルです。卸売などの中間コスト、店舗運営費などのコストを削減でき、顧客と直接つながることで、課題・ニーズを把握し、商品・サービスを改良していくことが可能というメリットがあります。ShopifyやBASEなど、無料もしくは少額で簡単に自社のECサイトを立ち上げ可能なサービスが充実している昨今では、小規模な事業者でも採用しやすいモデルです。ただし、認知度を上げ、自社ECサイトへの集客を図るためには、Webマーケティングのノウハウが必要です。
2-2 サブスクリプション
サブスクリプションは、月額制など一定の金額を顧客に払ってもらい継続的に商品、サービスを提供する仕組みです。有名な例としてAmazonプライム・ビデオなどがあり、美容院、ラーメン屋さんでも取り入れているところがあります。事業者としてもメリットは、安定的な収益が得られることですが、デメリットとして、顧客がいつでも解約できる、利用顧客の数が見込めないといった点があります。そのため、安定的な利益を獲得するための利用顧客数を計算し、維持するための働きかけをするがあります。
3.ビジネスモデルキャンバスを使ってビジネスモデルを描いてみる
ビジネスの構成要素である誰に、何を、どのように、を考えやすくするツールとしてアレックス・オスターワルダー氏、イヴ・ピニュール氏により開発されたビジネスモデルキャンバスがあります。1枚のシートでビジネスを行うために必要な要素を可視化し、検証することができるという点が優れています。
ビジネスモデルキャンバスは9つの領域から成り立ち、番号順に考えていきます。実際に作業する際には、複数人でポストイットを貼り出していくということを行います。また一度に作り上げる必要はなく、検証をしながら見直し、完成度を上げていきます。
①顧客セグメント(Customer Segments)
自社の商品、サービスを価値と受け取ってくれる人は誰かを設定します。セグメントの属性を年齢、性別、嗜好、ライフスタイルなど、なるべく具体的にイメージしやすいように書き出します。
②価値提案(Value Propositions)
ターゲットとした顧客セグメントの課題を考え、その課題を解決するために、自社で提供できる価値(商品、サービス)は何か、を書きます。
なお、バリュープロポジションキャンバスというツールを使うと、顧客の課題、悩み、利得は何か、自社の価値提案はそれらを解消できるのかを検証することができます。
③チャネル(Channels)
自社で提案できる価値を、どうやって顧客に届けるかを描きます。認知してもらう手段、購入してもらった後に物理的に届ける手段が必要です。
④顧客との関係(Customer Relationships)
ターゲットとする顧客セグメントと、どのような関係を築き、維持するのかを定義します。
⑤収益の流れ(Revenue Streams)
顧客に提供する価値(商品、サービス)に対し、顧客からどのように収益を得るのかを書きます。
⑥リソース(Key Resources)
①~⑤までのビジネス:ターゲット顧客に提供価値を届け、収益化するために必要な自社で保有している/すべき人、設備、資金、知的財産/情報(ヒトモノカネ)、強みは何かを書きます。
⑦主要活動(Key Activities)
①~⑥までのビジネスを行うために、最も重要な自社の活動は何かを書きます。例えば、製造、サービスの提供、広告宣伝、技術などです。⑥、⑦により競争優位性、競争回避が可能かを検討します。
⑧パートナー(Key Partners)
顧客に自社の提供価値を生み出し、届けるために、自社で賄いきれない部分を委託する、あるいはともに価値を作り出す外部の企業や、リソースを書きます。
⑨コスト構造(Cost Structure)
①~⑧のビジネスを運営するために必要なコストを書きます。その中でどのコストが高価か、重要かを考えます。例えば、店舗運営のための家賃、配送コスト、人件費、製造のための設備のコストなどの固定費や、製造原価などの変動費などがあります。⑤の収益からこのコストを引いたものが利益になります。
参考として、前述したD2Cモデルにより、若い男性向けにスマホで購入可能なオーダースーツを販売しているFABRIC TOKYOを例に、ビジネスモデルキャンバスとバリュープロポジションキャンバスを描いてみました。
4.最後に
貴社の強みが生み出す価値を、ターゲットのお客様に正当に評価される形で、効率よく届けることで、利益を生み出し続けられるようなビジネスモデルを描いてみていただけると幸いです。迷ったら、さまざまなビジネスモデルを検討してきた中小企業診断士にアドバイスを求めてみるのはいかがでしょうか。
西村寿子 企業内中小企業診断士 nishimura.toshiko@orangerie.sakura.ne.jp
メーカーにて、ソフトウエア企画、プロジェクト管理、新規ビジネス創出を担当