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酒は万国共通のコミュニケーションツール

2021-10-03

三多摩支部 国際部
田村 茂

もう30年も前になる。当時アメリカに本社がある企業に勤めていたが、本社のIT部門と私が所属していた日本支社のIT部門とで共同開発のプロジェクトが立ち上がった。ITA(Information Technology Architecture)という、当時は最先端を行くシステム構想だった。アメリカと日本で共通のシステム基盤を構築し、アプリケーションについてもモジュール化して共同利用することで、システム開発の効率化、生産性向上を目指すものだった。そこで私は日本側のリーダーとして対応することになった。

 

約3年間、交互に、アメリカのメンバーが来日し、また日本からメンバーが本社に出張して、データ定義からデータを操作する中核システムなどの設計開発を行った。その中で、侃々諤々の議論もあり、日米の開発手続きの違いなどで戸惑ったことも多くあった。やはり文化が異なると微妙に進め方が違ってくるのだ。唯一、なんの支障もなく時間を過ごせたのは、仕事のあと日米のプロジェクトメンバーと一緒に飲んだときである。日中の仕事のことは忘れ、楽しく飲むことができた。非公式の場のコミュニケーションは、お互いに信頼し合える関係を構築することができる。

 

当時は飲むとトイレが近くなることが多く、レストランなどで飲んだあと、車でホテルまで送ってもらうのだが、ホテルまでのほんの10数分間で催し、途中の名も知らぬお店でトレを借りたこともある。そのため、本社のスタッフから、“Short tank Tamura”とからかわれたものである。

“Short”といえば、こんなことがあった。本社スタッフから、何かのことで二人のうちどちらの人のことを言っているのか、との質問で、”Small person”と答えたところ、”That short guy”との返事。私は背の低い(small)人のつもりで言ったのだが、正解は”short”だったわけだ。ひとつ勉強になった。”Tall”の反対は”Small”でないのだ。彼らと飲んでいると、いろんな英語が飛び出てくる。空になったビール瓶を横にして、”Dead soldier”という言葉もそのひとつである。

様々な国の文化や慣習を知るには、彼らと直接会って話をする(飲む)に限る。

ちなみに、ITAプロジェクトは3年の開発の月日を経て、一部のアプリケーションシステムが稼働しただけで、残念ながらその後発展することはなかった。今考えると、民間の会社がシステム基盤を開発するのは無謀だったのかもしれない。