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ウクライナ情勢から想う「二刀流経営」の重要性

2022-04-24

三多摩支部 国際部
野口紀彦

 

労使交渉の行方に気を揉んだ大リーグも1週間遅れで開幕し、我らが大谷祥平選手の「二刀流」の活躍に今年も期待が高まるばかりです。本稿を執筆している4月17日現在、大谷選手は投手としてはまだ白星が付いていませんが、一方の打者としては本日までに3本のホームランが飛び出して一安心です。今後も好不調の波はあるとは思いますが、少なくても投打いずれかでの活躍は間違いが無いだろうと予想されます。

このような平和な話題の裏で、今日の世界ではウクライナへのロシア侵攻という信じがたい事態は未だ終わりが見えず、数多くの罪なき人命が毎日失われるとともに、ロシアへの制裁強化による経済面での影響も長引くことが懸念されています。

ジェトロが2022年4月に発表した「ロシア・ウクライナ基礎情報」https://www.jetro.go.jp/ext_images/biznews/feature/ukraine.pdf

によれば、ウクライナへの軍事侵攻に伴う影響を在日ロシア企業の99%が受けており、内9%で売り上げがゼロになり、20%以上売り上げが減少した企業は過半数を超えています。また、既に全部もしくは一部事業を停止している企業の割合は半数に迫り、今後さらに縮小もしくは撤退を計画している企業も4割を超えています。

同レポートによれば、在日ウクライナ日系企業のビジネスへの影響はさらに深刻で、100%全ての企業がビジネスに悪影響が出ている現状の中で、現状のビジネス規模を今後も維持すると回答した企業は約2割しかありません。

ウクライナ情勢悪化に伴う影響は現地に進出している日系企業に留まらず、日本商工会議所が2022年3月に発表した「商工会議所LOBO(早期景気観測)」

https://cci-lobo.jcci.or.jp/wp-content/uploads/2022/03/LOBO202203.pdf

によれば、“ロシアのウクライナ侵攻によるビジネスへの影響について、「現在影響がある」と回答した日本企業は21.6%、「今のところ影響はないが、先行きに懸念がある」は71.0%となり、あわせて92.6%の企業が、ウクライナ情勢による影響を受けている”と報告されています。具体的な影響として、「エネルギー資源価格高騰による電力・燃料コストの上昇」が79.1%、「エネルギー資源を除く仕入コストの上昇」が56.2%、「コスト増に伴う価格転嫁が進まない」が42.7%という内容が上位を占めています。

このような状況の中で、ロシアとの直接的なビジネスが経営に占める割合が多い中小企業においては、さらに事態は深刻であるのは自明です。一例として、中小企業事業者が多い「日本製中古車の輸出ビジネス」においては、2021年に約122万台の中古車が海外へ向けて輸出されたうち、約13.3%にあたる約16万台がロシアへの輸出(日本中古車輸出業協同組合調べ)ですので、この事業への比重が高い中小事業者の経営への甚大な影響が懸念されます。

さて、ウクライナ情勢によって経営危機に陥った中小企業事業者に対する日本国政府機関による支援内容は、経済産業省のHPに「ロシア等によるウクライナの侵略をめぐる国際情勢に関連した経済産業省による支援策・措置」としてまとめられています。https://www.meti.go.jp/ukraine/index.html

4月17日現在は、記載されている支援内容のうち金銭的な支援は「セーフティネット貸付の運用緩和」のみですが、今後も影響が拡大していく状況が長引く場合には、助成金などの追加施策が行われる可能性もあり、海外ビジネスを支援する中小企業診断士は随時確認が必要かと思います。しかしながら経営の柱となる事業を失ってしまっては、いくら公的支援で当座を繋いでも経営難を脱するのは容易ではないと心配されます。

さて私も将来は、中小事業者の海外ビジネス展開や海外スタートアップとの連携支援を行うことを目標としておりますが、今回の事態を目の当たりにして、特に特定の海外ビジネスにのみに頼る「一本足打法」の経営では、今後も世界各国どこで起きても不思議ではない突然のマクロ環境変化に対して経営リスクが極めて高いことを改めて肝に銘じています。

このような深刻な話題を冒頭の大谷選手の成功例で語るのは不適切かもしれませんが、あくまでたとえ話としてご容赦頂ければ、「投打」全く性質や市場が異なるビジネスによる「二刀流経営」を平時から目指すことによって、ひとつの中心事業に想定外の大事が突如発生した場合でも、他のビジネスで何とか経営を持ちこたえることが出来るようにしておくことが、特に海外を目指す中小企業には必須であろうと考えます。

と、ぼんやり考えてネット検索をしておりましたら、私ごときが考えるようなことは誰しも考えることであり、下記リンクに同じようなコラムを見つけました。

https://frontier-eyes.online/2022-dual-wield/

「2022年展望「二刀流」経営の本質に迫る」記:フロンティア・ターンアラウンド㈱代表取締役 大西氏

上記コラムのまとめを引用しますと、“異質な複数の業務の混合による新たなビジネス、異なる考え方・戦略を同時に行うことでの強みの発揮、顧客ニーズを全て満たすための多様なソリューションの習得等、「二刀流」がもたらす強みは様々である。混迷と変化の時代を乗り切るためには、「二刀流」がその有力な解を導くことを確信している。”とのこと。

すなわち「二刀流経営」は、単純にリスク分散という側面だけではなくて、二刀流を目指すことが、既存事業にも好影響をもたらし、さらに新たな3つ目の事業を生みだすことにも繋がる可能性がある、ということでしょう。

実は本稿を執筆している私が在籍している企業においても国内既存事業の「一本足経営」からの脱却のために海外事業の開拓を長年目指しています。私自身もその先導役の一人として中途入社し、海外事業におけるリスクを低減させるために、地域事情が大きいハードウェアビジネスから国境を越えられるSaaSビジネスへの転換、デザイン性の高いホームページやSNSによる情報発信力の向上、現地パートナーを活用した新たなビジネスモデルの実現などを推進しています。

海外事業の開拓のために推進しているこれらの取り組みは、一方では日本国内における新規市場開拓にもチャンスを広げており、「国内既存事業+海外市場開拓+国内新規事業」への「三刀流」の事業構造への改革を目指すことに繋がっておりますので、先のコラムの主張は「我が意を得たり」の想いです。

近い将来の中小企業診断士活動においてもこの経験を活かし、ご支援先のすべての事業者が「二刀流」の経営を実現し、「次」のマクロ環境変化に備えるための適切なアドバイスが出来るように、今は現業において様々なアイデアで事業を多角化するチャレンジを継続していきたいと考えています。

以 上