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タイの現状から考察する我が国のインバウンド対応

2022-07-09

君塚吉是

2022年6月現在、政府は外国人観光客の受入れ再開を目指し、水際対策の緩和に舵を切った。我が国の観光産業は、宿泊業、飲食業を中心に、壊滅的なダメージを受けてきたが、感染者数の減少をきっかけに県民割等GoTo代替策の再開等、状況の打開を探る動きが垣間見えてきた。我が国に先立ち、観光産業を重要視するタイ政府が現状行っている対策と実態を踏まえ、我が国のインバウンド対応策について考察する。

タイに於ける、2022年6月現在のCOVIT⁻19感染者数は同年4月に比較し11%と逓増しているが、収束するまでには至っていない。しかしながら、観光を主要産業と位置付ける同国は、外国人観光客に対する水際対策を大きく緩和している。入国に際しては、「タイランドパス」と称されるWEBシステムが稼働中で、2回の予防接種と、100万ドル以上の医療保険のエビデンスを同システムにアップすることで、簡単に入国の承認が得られる仕組みとなっている。さらに、7月からは、アイランドパス自体も廃止になり、予防接種証明があれば陰性証明や医療保険の加入も不要となった。これらの動きに伴い外国人観光客数は急増しており、タイ政府は本年中の外国人観光客数の目標を2019年対比40~50%に定めている。

国別の観光客数については大きな変動が起きている。特に、紛争問題によるロシア人観光客の激減と、ゼロコロナ政策に執着している中国人観光客の減少は顕著である。現地観光事業者の感覚でも、中国人、ロシア人観光客の急減と、インド人観光客の急増が顕著とのことである。
現在タイでは、マスクの着用率は比較的高く、我が国と比べても遜色はない。しかしながら、外国人観光客の増加策も相まって、マスク着用義務の緩和が検討されている。タイに於いても物価上昇は顕著で、多くの飲食店のメニューには価格変更のシールが貼られている。日本人の訪タイ観光客にとっては、物価上昇に加えて、極端な円安で、もはや「安さ」だけを同国に求めることは既に困難な状況になりつつある。そのなかで、外国人観光客対策として、マリファナ関連の規制緩和に注目が集まっている。無論、麻薬としての使用は禁止されているが、栽培や、飲食については許容されつつあり、これも観光立国としての魅力度向上策の一環と言われている。

我が国の外国人観光客の受け入れ再開に於ける最大の問題は、やはりCOVIT-19対応であろう。水際対策のDX化や、ツアーに限定した入国許可、マスクの着用問題等、手探りながら推進していく他ない。しかしながら、前述の通り、観光立国のタイでは入国規制が大きく緩和されており、当該対応と比較すると、我が国のインバウンド対応は極めて厳しい。円安は物価高騰等我が国の中小企業に大きなダメージを与えているが、インバウンド需要の拡大にとっては大きな武器となり得るものである。したがって、タイムリーなインバウンド対応策の実施が望まれる。そのためにも、政策決定者は無論のこと、外国人観光客受け入れに対するマスコミや我々一人ひとりの国民も、常に最新の国際情報を入手し、意思決定を行うことを期待したい。

 

以 上