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フィンランドの思い出から考えること

2022-09-23

三多摩支部国際部
高取宏行

最近、ロシアのウクライナ侵攻に伴い、これまで中立を務めていた同国がNATO加盟を申請したり、初の女性首相のパーティが問題化したりで話題を集めています。
私も1986年から12年ほど同国にある企業を担当し、1994年から4年間のドイツ駐在時代は毎月訪問しておりました。いろいろと思い出したことや調べたことをもとに今月のコラムに書いてみました。

国名はフィンランド共和国、現地ではSUOMIと言います。面積33.8万km2、日本は37.8万㎞2なのでほぼ同じです。しかし、人口は554.8万人と日本(1億2,478万人)の日本の約1/22、GDP 2989億ドル(世界46位)ですが、一人当たりGDP では5.4万ドル(世界13位)、日本は3.9万ドル(世界28位)といつの間にか逆転されています。男性の育休は7か月あり、「世界で一番幸せな国」5年連続1位に選ばれています。

参考: JETRO フィンランド概況
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/europe/fi/data/fi_202206.pdf

 


湖の小島にあるサウナ(湖に浮かぶ小島にサウナがあり、サウナに入って、湖で泳いで、
ビールを飲むという幸せな時間を過ごしました。)

フィンランドの人はとても親日的だったと思います。かつては「北欧の日本」と言われたほど勤勉な国民です。彼らの定番の話題は「TOGOビール」と「フィンランド語と日本語は一緒の言語族」でした。

TOGOビール

「フィンランド人は東郷平八郎が日本海海戦でロシアのバルチック艦隊を破った(1904年)おかげで、フィンランドはロシアから独立した(1917年)。 だから、フィンランド人は東郷平八郎を尊敬してTOGOビールがあるんだ。」と熱く語っていました。
しかし、インターネットではTOGOビールというものはなく、AMIRALI(提督)ビールのシリーズの一つに東郷平八郎があるとさめた解説がありました。私が聞いたのとはニュアンスが違っています。

 

AMIRALIビール(TOGOビール)
出所:http://suomi.racco.mikeneko.jp/Elama/ystava.html

フィンランドの言葉、ウラル・アルタイ語族

フィンランドの人から言われたのは、「フィンランドと日本は同じ語族で似たような単語がたくさんあるよ。」私の記憶に残っているのは「フィンランド語のヨッパラッテは日本語の酔っぱらってだよ」と「私の苗字のタカトリ」は「フィンランド語では英語のBack of the Marketという意味だ」と言われたことです。タカはBackでトリがMarketとのこと。正確な意味は不明ですが裏の方にある寂しい市場なのでしょうか、あまり気分は良くないので深くは聞きませんでしたが…
ハンガリーに出張にいった時にも、知らないハンガリー人から日本語とハンガリー語は一緒の語源だと言われたことがあります。モンゴルや韓国が一緒の語族だということは知っていましたが、ヨーロッパのフィンランドやハンガリーが同じ語族だと知って当時びっくりしました。これらの語族をウラル・アルタイ語族というのは最近知りました。トルコ語もウラル・アルタイ語族に属するそうです。トルコ人も親日的と言われています。
その他のヨーロッパ(英語、フランス語、ドイツ語など)の源流はインドの古代語サンスクリト語が祖語で印欧(インド・ヨーロッパ)語族とのことで、ここでインドが繋がってくるとはという感じです。
下記にウラル・アルタイ語族の分布図を載せました。ロシアの領土内にも広範囲にわたります。モンゴルやカザフスタン、ウズベキスタンなど中央アジア諸国への支援に見る目も変わってきました。

 


ウラル・アルタイ語族の分布図
出所:「ことばは国家を超える」田中克彦著、ちくま書房

シベリアランドブリッジ(SLB)

上記の地図を見て思い出しましたが、当時はフィンランドへの輸出は船よりも早くて、安いということでSLBを使っていました。安いのはロシアの外貨稼ぎと聞いていました。
神戸を出港してナホトカで陸揚げし、ウラジオストックからモスクワへシベリア鉄道で、モスクワでフィンランド行きの鉄道に詰め替えていたと記憶しています。シベリア鉄道はモンゴルやその西のウラル・アルタイ語族の分布しているちょっと北を通っています。
途中で貨物を盗まれるという事故もあったようですが、我々の製品は何十トンもあって重いので、盗まれることはなく、損傷することもありませんでした。ウクライナ侵攻前の時点でSLBの料金は船よりも高くなっていました。需要があって人気は高かったということでしょう。ウクライナ侵攻で需要は減っているのでしょうか? 競合にチャイナランドブリッジ(CLB)があります。江蘇省の連雲港・山東省の青島を出て新疆ウイグル ― カザフスタン経由で中央アジアへ繋がり、さらにヨーロッパへも繋がっています。

おわりに

フィンランドは日本と同じくらいの国土面積にたった550万人ほどで、世界一幸せな国を築いています。昔は経済力のあった日本にあこがれて、TOGOビールとか同じ語族とかセールストークを用意して買い物に来てくれていました。これを我々は親日的と勘違いしてしまっていたのかもしれません。急速に人口減少が進む我が国はフィンランドを手本に世界一幸せな国を目指す必要がありそうです。
人口減少といえば、外国人労働者は東南アジアが多いイメージですが、ウラル・アルタイ語族の国の人もよいかもしれません。モンゴルのお相撲さんは日本語ペラペラです。言葉の面ではかなり有利です。全部がそうではないでしょうが、これから機を見て調べてみようと思います。ちょっと興味が湧いてきました。

以 上