日本で唯一の経営コンサルタントの国家資格を持つ中小企業診断士の集団です

今後の国際ビジネスにおける、外国人材についての一考察

2023-05-06

                              三多摩支部国際部
酒向 敦

最近はニュースでも、外国人材についての話題が取り上げられることが多いですね。

中小企業でも多くの企業が技能実習制度に基づいて技能実習生に来てもらっています。
今、この制度が大きく変わろうとしています。日本企業は、従業員の採用に苦慮しており、
特に農業、漁業、建築業では若い働き手がおらず、多くの外国人材に来てもらっているのが現状です。約35万人の外国人の方が、技能実習生として日本に来て働いています。そう、この「働いている」との表現が制度と実態があっていないことが問題になっているのですね。
技能実習制度とは、1993年に創設された制度で、我が国で培われた技能、技術又は知識を開発途上地域等へ移転することによって、当該地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与することを目的としてしており、日本での就労を目的とした制度ではありません。しかし、受け入れている企業側も、日本に来ている技能実習生も、またそれを運営している組織も建前と実体の違いを認識しながら運用しているのです。

ここで、日本における外国人材の在留資格について、纏めてみたいと思います。
次の図は、「在留資格(活動類型)の分布」を表しています。
縦軸の上が高度な専門的な知識が必要とされる資格、横軸は右側がホワイトカラー、左側が
ブルーカラーの資格として、各在留資格を位置づけています。
「技能実習」は、黄色の枠で、左下のポジションに位置しています。
現在、ジェトロやJICAが積極的に外国人材の採用をサポートしようとしているのは、オレンジ色の枠で「高度外国人材(技術・人文知識・国際業務)」 と言われる在留資格です。技人国 (ギジンコク)と呼ばれることが多いです。
2019年4月より受入れが可能となった在留資格として「特定技能」があります。新型コロナによる日本への入国規制により、実際は昨年 2022年から徐々にその働き手が入国してきています。2022年12月末現在で、約13万人となっており、その約60%がベトナム人、12.5%がインドネシア人、10%がフィリピン人となっています。

 

 

各在留資格の目的と、活動できる内容と可能となる在留期間も纏めておきます。

 

 

「技能実習制度」の問題は何かと言うと、
①制度自体が、実習を通じた技術移転による人材育成をして、国際協力をするのが目的となっており、就労ではなく、実体とあっていない。
②技能実習制生が母国でその準備をする際に、多額の準備費用が必要となっている国がある。
③日本での管理団体や現地国の送出機関に問題がある組織がある。
④日本での受入れ企業側で、外国人材との文化の違いや言葉の壁によるコミュニケーションギャップが大きく、業務が上手くいかなくなる企業がある。
⑤在留期間の間は、他の企業へ転職することができない。
などがあげられます。

政府の有識者会議が技能実習制度の廃止と新制度創設の検討を求めたのは、理念と実態のズレへの批判を解消し、人材を確保し続けられる制度に変更する為とのことです。新制度は特定技能と対象業種などを一致させることを検討しているとのこと。論議されている重要な点をまとめると、
①制度目的と実態を踏まえた制度の在り方
現状:人材育成を通じた国際貢献
新たな制度:現行の「技能実習制度」は廃止して人材確保と人材育成を目的とする実態に即した制度への抜本的な見直しを検討。「特定技能制度」は制度の適正化を図り、引き続き活用する方向で検討し、新たな制度との関係性、指導監督体制や支援体制の整備などを引き続き議論

②外国人が成長しつつ、中長期的に活躍できる制度(キャリアパス)の構築
現状:職種が特定技能の分野と不一致
新たな制度: 新たな制度と特定技能制度の対象職種や分野を一致させる

③転籍の在り方(技能実習)
現状:原則不可
新たな制度:人材育成に由来する転籍制限は残しつつも、制度目的に人材確保を位置付けることから、制度趣旨と外国人の保護の観点から、従来より
緩和する

④管理監督や支援体制の在り方
現状: 監理団体、登録支援機関、技能実習機構の指導監督や支援の体制面で不十分な面があるまた、悪質な送出機関が存在
新たな制度: 監理団体や登録支援機関が担っている機能は重要。他方、人権侵害等を防止・是正できない監理団体や外国人に対する支援を適切に行えない登録支援機関を厳しく適正化・排除する必要

⑤外国人の日本語能力の向上に向けた取組
現状:本人の能力や教育水準の定めなし
新たな制度:一定水準の日本語能力を確保できるよう就労開始前の日本語能力の担保方策及び来日後において日本語能力が段階的に向上する仕組みを
設ける

有識者会議では、令和5年秋を目途に最終報告書を取りまとめるとのことです。
(出入国在留管理庁HP,第7回 有識者会議 2023年4月28日開催の中間報告書(案)概要よりPic Up)

アジアの近隣諸国も、高齢化と少子化が進んでおり、外国人の若い働き手を必要としています。このままでは日本は、外国人からみて、働きたい国として選ばれなくなるのではないかと言われています。政府は在留資格の制度改定を進めると思いますが、日本の中小企業側の「内なる国際化対応」が進まないと、抜本的な改善に繋がらないのではないかと危惧しています。

 

以 上