ドイツアップデート
三多摩支部国際部
高取 宏行
先月5月8日に新型コロナ感染症も「5類感染症」となり、円安効果もあって企業の海外展開はインバウンドもアウトバウンドも本格化し始めました。
おかげさまで今年度はドイツ関連の案件に絡めそうです。ドイツは駐在していたのが25年前(1994年8月~1998年10月)。当然状況はかなり変わってきています。コラム執筆の場を借りて、どう変わったかを見ていきたいと思います。
人口
人口は1995年8131万人、2023年 8386万人と255万人も増えています。これには驚きました。 昔は「ドイツは人口減でドイツ人は将来地球上からいなくなる」と言われていました。2000年代後半から保育施設の拡充や両親手当で男女の家事育児負担平等化と女性の職場復帰を促すなどの家族政策改革で出生率回復を促したそうです。日本も今、「異次元の少子化対策」を岸田首相が打ち出していますが、出生率回復してほしいところです。
出所:「世界経済のネタ帳」人口の推移(ドイツ、日本)
出所:「ドイツにおける少子化対策」「「男は仕事、女は家庭」だと給付減」
GDP
ドイツのGDPは1995年 2兆5880億ドル、2023年のIMF推計値は 4兆3089億ドルで約1.7倍成長しています。ちなみに日本は1995年 5兆5456億ドル、2023年IMF推計値は4兆4097億ドルと20%ほど目減りしています。円ベースでは約12%増えていますが、ドイツの成長と比べると日本の成長は見劣りします。
出所:世界経済ネタ帳「ドイツのGDPの推移」
自動車
ドイツの主要産業である自動車ですが、ベンツの売上高の推移を見てみます。1995年Daimler-Benzの1995年 売上高は72,185 Mil USD、2022年のMercedes-Benz Group売上高は150,017 Mil € (≒ 142,348 Mil USD)とUSDベースで約2倍です。
出所:Mercedes-Benz Group売上高
トヨタは1996年10.7兆円、2022年 31.4兆円と円ベースでは約3倍です。USDベースでは約2.3倍となってしまいます。ちなみに、フォルクスワーゲンは2022年2792億ユーロ、2000年831億ユーロで3.4倍成長しています。
出所:
トヨタの連結財表における26年間の損益・財政状態に関する基本的財務構造変容の推移について
フォルクスワーゲンの販売台数・売上高・営業利益・純利益の推移
首相
私の駐在時はヘルムートコール(キリスト教民主同盟 CDU)1982年~1998年で5次内閣まで勤めていました。その次はゲアハルト・シュレーダ(社会民主党 SPD)1998年~2002年。その次がアンゲラ・メルケル(CDU)2005年~2021年と在任16年です。メルケル首相は上記の少子化対策や「欧州の病人」といわれたドイツを「世界の経済大国」に成長させた実績が光ります。現在はオラフ・ショルツ(SPD)です。
通貨
現在の通貨はユーロ、私の駐在時代はドイツマルクでした。当時の為替レートは円高の時は60円を割り込み、帰国する頃は80円位、だいたい70円台という推移でした。帰国して3か月後にユーロに統一されました。ユーロへの交換レートは1.95583です。最近の為替レートは147円/ユーロなので、ドイツマルクに換算すると75円と駐在当時と同じ位です。
サッカー
私は特にサッカーファンではありませんが、1996年ドイツは欧州選手権で優勝しました。住んでいたアパートの前の通りでも大喜びの国民が車でクラクションを鳴らして夜中に走り回っていました。それを最後に優勝からは遠ざかり、昨年11月のワールドカップでは日本にも負けました。それでも欧州選手権通算優勝回数3回はトップで、2012年、2016年はベスト4ですのですぐ復活してくることでしょう。
出所:UEFA欧州選手権
オリンピック
2020年東京オリンピックではドイツは金メダル、メダル獲得総数共に1996年アトランタ大会の約半分に減っています。
1996年アトランタ ドイツ金 20個(日本3個)、メダル総数 65個(日本14個)、
2020年東京 ドイツ金 10個(日本27個)、メダル総数 ドイツ 37個(日本 58個)
出所: 1996年アトランタ五輪‥国別メダル数と日本人入賞者は?
感想
本稿ではドイツのほんの一端しか見ていませんが、先月開かれたG7でもドイツのショルツ首相はあまり目立たず、スポーツの成績も一時ほどではなくなったような印象を受けます。しかし、国力(人口や経済力)では着実に成長しており感心しました。日本もまだまだドイツに学ぶことはたくさんあると気づかされました。
以 上