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コロナ終盤での海外出張体験

2023-07-01

三多摩支部国際部
尾崎太郎

 

本年5月よりコロナも5類へ移行し、日本においてもやっと個人の行動も自由化してきたように思えます。海外での行動の自由は日本より先行していましたが、コロナ終盤とも言える2022年の海外出張の体験について振り返って記したいと思います。

 

2022年3月ドイツ

3/12~3/17 羽田⇔フランクフルト ANA直行便
本来往路は羽田⇒チューリッヒ⇒フランクフルトの便でしたが、発券後企業側同行者1名がワクチン接種の証明書(英文)を持っていないことが判明しました。チューリッヒでのトランジットでは一度スイスに入国する必要があり、ワクチン接種証明提示がスイス入国の条件であることが判明したところ、ANA側がフランクフルト直行便に振り替えをしてくれました。製品サンプルを持参したのですが、非常に重いため超過手荷物として別に預けざる得なくチューリッヒ経由だと無事にフランクフルトに到着するか不安でしたが、直行便のせいなのか無事フランクフルトで受け取りが出来ました。
フランクフルトでは中央駅近くのホテルに3泊しましたが、ホテルのチェックインは非常に厳しく同行者はワクチン接種証明書を持っていない為チェックインを断られました。ホテル近くにワクチン接種センターがありそこでワクチン接種をすることでようやくチェックインが認められました。ワクチン接種は毎日行い日々証明書をホテルのレセプションに提示しないと部屋に入れてくれません。(私は英文の接種証明を持っていたためその必要ありませんでしたが)
日程的に現地で行動できる日は2日しかなく、1日はシュツットガルト近くの企業訪問、1日はフランクフルト近郊の関連施設視察をしました。ホテル⇒企業は車で2時間くらいでしたが、制限速度なしのアウトバーンでは150キロくらいは出しての所要時間で相当遠い感覚でした。ドイツでは英語が通じないので、ドイツ語通訳必須とのことでしたが(ドイツ語が出来るコンサルタントを同行)、そんなことはなく英語でのコミュニケーションは問題ありませんでした。むしろドイツ語が出来るコンサルタントを同行したのは失敗で、コンサルタントと先方企業間で大方話を進め通訳という機能を果たせませんでした。(結局そんなことで話し合い合が消化不良であった感が残りました) 教訓として事前に先方企業が英語ができるかどうか確認し、英語ができるなら通訳は同行しない方がいいと思います。(話す英語も判りにくいということはありません)また先入観としてドイツはアジアのように価格交渉は厳しくなく、機能・品質が重要視されると思っていましたが、そんなことはなく価格に非常にシビアでした。(機能・品質もそれなりには評価はされますが)

 

2022年10月アメリカ、カナダ

10/15~10/22 成田⇒シカゴ(トランジット)⇒ボストン⇒メイン州ブランズウィック⇒ボストン⇒トロント⇒バンクーバー⇒成田
この時期においてはアメリカ、カナダとも入国時にワクチン接種証明は必要なくコロナ前と同様にアメリカはESTA、カナダはEtaだけで入国が可能でした。出張行程を通じてコロナを意識することはまずなく、街中でマスク着用の人もほぼ0でした。国際線(ANA)の機内では、マスク着用は必須でしたが、アメリカ(カナダ)国内線の機内でマスク着用している人は1割くらいでした。
北米においては大都市を除き公共の交通機関はほとんどなく今回も日程中の移動はすべてレンタカーとしました。最近のアメリカのレンタカーにはナビをつけるというオプションはなく、自分のスマホをナビとして使わざるを得ません。従って日本からWiFiルーターを持参するか、現地のSIMカード購入が必須となります。(昔のようにレンタカーのオフィスには地図も用意されておらず、スマホのナビ無しでどこへも行けません)
円安と米国の物価高のダブルパンチでホテル代の高騰が著しく、1泊目はボストン近郊での宿泊はあきらめマサチューセッツ州からメイン州に入って直ぐの田舎町で宿泊しましたが、それでも日本円で3万円くらいでした。2泊目以降も都市中心部は避けて郊外に泊まるようにしましたが、それでも平均3万円/泊はしました。
私は米国の英語には慣れ親しんでいるので、北米では言葉のストレスはあまり感じることなく過ごせました。(アジアなどでの英語のコミュケーションではそうはいかないのですが) とは言え企業訪問してのプレゼンでは、ネイティブと同様に話せる訳ではないので事前準備は必須です。企業訪問の際には製品説明の動画(英語)を用意していきましたが、これは効果的でした。説明の要旨を英語でまとめプレゼン資料も用意していきましたが、製品特徴を説明するのに動画に勝るものはないでしょう。新たな機能を訴求するような製品のプレゼンでは、言葉(しかも外国語)では先ず相手を完全に理解してもらうのは難しいと改めて認識しました。

2022年11月スペイン

11/14~11/20 羽田⇒イスタンブール(トランジット)⇒マドリッド⇒イスタンブール(トランジット)⇒羽田
この時期航空運賃が高騰しており、ANAのフランクフルト経由で行こうとしましたが冗談みたいな価格で(エコノミーでも通常のノーマルビジネスよりさらに高い印象、ファーストクラスに近いような価格設定)、比較的安いターキッシュエアのイスタンブール経由便を使った次第です。この時期コロナの影響は皆無のようで、むしろコロナの反動で観光客、ビジネス客は増えている印象でした。マドリッドは4泊しましたが、その影響か通しで4泊取れるホテルはほとんどなく中心部から離れたチャマルティン駅にあるホテルがようやく4泊通しで取れました。街中ではマスクをしている人をほとんど見かけませんでした。
出張日程中は企業訪問と展示会視察を行いましたが、展示会ではコロナの影響はまったく感じさせず盛況でした。展示会では、人が多く集まるブースとそうでないブースがあり、人が多く集まるブースは飲み物(ソフトドリンクだけでなくワインも)と軽食が提供されていました。これはラテン系特有の傾向なのでしょうか、スペインの展示会でとにかく人を多く集めたい場合は(効果はともかく)飲食を提供することが有効と認識させられました。
出張日程中は通しでスペイン語の通訳を頼みましたが、これは正解でした。スペインでは英語を話す人はほとんどおらず、通訳なしでのビジネスミーティングは難しかったでしょう。移動は車をチャーターしましたがこれは高額でした。重い製品サンプルを運ばなければならなかったので車のチャーターはやむを得なかったのですが、サンプルさえなければ公共の交通機関+タクシー・ウーバーでもよかったように思います。
今回製品プレゼンテーション用に動画は持参したのですが、英語版しかなく反応はイマイチでした。ナレーションは英語でも現地語でテキスト表示するような形で動画を用意すべきと痛感しました。(現地語のテキストはプロの翻訳者に頼まなくても自動翻訳でも十分ではないかと思います) 英語が通じず通訳を頼む際には、通訳のレベルでビジネスの成否も変わってくるとも認識しました。今回頼んだ通訳(国籍はスペインながら、外見・中身は完全に日本女性という方でした) 、勉強熱心で事前に製品知識、ビジネスバックグラウンドを充分勉強してくれていたのでミーティングはスムーズに行えました。(ドイツの出張の際はそうではありませんでした)

 

2022年12月タイ

12/18~12/21 羽田⇒バンコク⇒羽田
タイは北米、ヨーロッパとまったく別世界でこの時期に及んでもコロナの規制が厳しい状況でした。(日本より厳しいという印象です) 当然街中では誰もがマスクをしています。一番驚いたのは、バンコク近郊のある企業を訪問した際には、先ず会議室には通されたのですが、そこで抗原検査キットで検査をさせられ、陰性が確認された後面談相手が現れました。
タイでは最近英語ができる人の比率が上がってきているように思います。昔は英語ができると言ってもよく判らない英語を話す人が多かったですが、今は若い人を中心にネイティブに近い英語を話す印象です。今回通訳は頼みませんでしたが、タイ語のできる日本人コンサルタントが同行したので、英語が判らない面談相手の場合は通訳を頼みました。但し、英語が判る相手の場合はそのコンサルタントを含めストレスなく英語で会話を行っていました。タイでは基本的には通訳は必要と思いますが、相手が英語が判るのであれば敢えて通訳を頼まなくてもよいでしょう。
タイでのビジネスミーティングの際によく話題になるのが、模倣対策です。北米、ヨーロッパでは先ずそのような話は出ません。タイだけではなくアジア全般に言える話ですが、模倣対策ということは大きなビジネスイシューとはなります。(今回の出張でも同様です)
今回の出張の日程を通して車をチャーターして企業訪問をしましたが、これは訪問先の企業がほとんど郊外にあったからです。訪問先がバンコク市内であれば公共交通機関やタクシーで問題ないでしょう。

コロナの終盤と言える時期に、北米、欧州、アジアに出張しましたが、北米・欧州とアジア(タイ)はあまりにも状況が違ったというのが印象です。個人的な印象ですが、北米・欧州では個人個人が如何に日常生活を快適に過ごすかに重点が置かれているように思います。タイでは、コロナが怖い、死にたくない、後遺症が残りたくない、という意識が強いように思います。日本はどちらでもなく、如何に社会に同調して生きていくかに重点が置かれているように思います。このような考え方をする国は他に例を見ないように思います。(これがいいことかどうかは判りませんが)

 

以 上