海外ビジネス支援におけるChatGPTなどの生成型AI活用の可能性とリスク
三多摩支部 国際部 野口紀彦
皆様は、今話題のChatGPTを既に活用されていますでしょうか?私はサラリーマン診断士として、交通や観光系のDXシステム開発を生業としておりますが、その業務の中でChatGPTを大いに活用して業務効率の改善に役立てています。
例えば、弊社で開発した、富士山へのインバウンド観光客向け、スマホ乗車券の紹介サイト(https://info-fujikyu.quickride.jp)を多言語で制作した際にも、ChatGPTは多いに活躍してくれました。翻訳は従来から自動翻訳アプリで簡単にできるのでは?と思われるかもしれませんが、ChatGPTには、希望の条件を加えた「欲張りな」質問ができるところが大きく違います。
例えば、「以下の日本文を、英語、韓国語、繁体語、簡体語、ベトナム語へ、フォーマルな表現で翻訳してください。“このデジタル乗車券を、バスに乗る際に乗務員に見せてください。”」と質問してみます。
すると、ChatGPTは以下の「答え」を即座に返してくれます。
ChatGPTの返事(ここから)→
以下にそれぞれの言語でのフォーマルな翻訳を提供します。
英語: “Please present this digital boarding pass to the bus operator when boarding the bus.”
韓国語: “이 디지털 탑승권은 버스를 탈 때 운전원에게 제시해 주세요.”
繁体語: “請在搭乘公車時向乘務員出示這張數位乘車券。”
簡体語: “请在乘坐公交车时向乘务员出示这张电子乘车券。”
ベトナム語: “Xin vui lòng trình cho nhân viên lái xe vé lên xe số này khi lên xe buýt.”
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如何でしょうか?私は英語以外分かりませんが、各言語に通じた社員によれば、いずれの言語においても他の自動翻訳よりもかなり正確に即時に翻訳してくれるようですので、大いに業務に活用させて頂いています。
もちろん、ChatGPTは翻訳以外にも色々な質問に答えてくれますので、診断士による海外展開支援にも様々な活用ができそうです。
試しに、「今最も日本酒の海外展開に魅力的な国はどこでしょうか?」と聞いてみましょう。
ChatGPTの返事(ここから)→
「日本酒の海外展開において、いくつかの国が魅力的な市場とされています。以下にいくつかの注目すべき国を挙げます。
アメリカ合衆国: アメリカは日本酒の最大の輸出先であり、日本酒の人気が着実に増加しています。日本酒バーの数や日本酒に対する関心の高まりが見られ、多くの酒造メーカーや輸入業者が市場に参入しています。
ヨーロッパ諸国: ヨーロッパでも日本酒の需要が拡大しており、イギリス、フランス、ドイツ、オランダなどの国々で人気が高まっています。これらの国では日本文化や料理の人気もあり、日本酒が注目を集めています。
カナダ: カナダも日本酒の輸入が増加しており、特に都市部での需要が高まっています。カナダでは日本食やアジア料理が人気であり、それに伴って日本酒の需要も増えています。
オーストラリア: オーストラリアでも日本酒の需要が増えており、特に都市部のバーやレストランで人気があります。オーストラリアでは日本文化に対する関心が高く、それに伴って日本酒の需要も伸びています。
これらの国々は、日本酒の海外展開において注目されている市場ですが、その他にも世界各国で日本酒の需要が増えている傾向があります。地域の食文化や消費者の好みによって需要が異なるため、各国の市場状況や消費トレンドを詳しく調査することが重要です。」
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如何でしょうか?まるでどこかの公的機関に質問した際の返答のようでは無いでしょうか?もう一つ聞いてみます。
質問→「日本酒をオーストラリアに輸出したいのですが、どの都市がお勧めですか? 」
ChatGPTの返事(ここから)→
「日本酒をオーストラリアに輸出する場合、どの都市がお勧めかはいくつかの要素によって異なります。以下に考慮すべき要素を挙げますが、具体的な市場調査やビジネス計画の詳細な検討が必要です。
需要の高さ: オーストラリアの都市には日本酒を愛好する人々がいますが、需要の高い都市もあります。シドニーやメルボルンは人口が多く、多様な食文化が根付いているため、日本酒の需要が比較的高いと言えます。
日本食業界の発展度: 日本酒の需要に影響を与える要素として、日本食業界の発展度があります。日本食レストランや日本食材の入手性が高い都市は、日本酒の需要も高まる傾向にあります。シドニーやメルボルン、ブリスベン、パースなどは日本食業界が比較的発展している地域です。
競合状況: 輸出先都市の競合状況も重要な要素です。競合他社の数や日本酒の供給量を考慮し、需要と供給のバランスを判断する必要があります。
地理的条件: オーストラリアは広大な国であり、都市間の距離や交通アクセスも考慮すべき要素です。物流や配送の効率性、輸送費用なども検討してください。
これらの要素を総合的に考慮し、ビジネス戦略や市場調査を行うことが重要です。市場の特性や競合状況、需要の見込みなどを詳細に分析し、最適な都市を選択することが成功の鍵となります。」
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なんとも「尤もらしい」返事では無いでしょうか?具体性の少ない回答ではありますが、もっと具体的な質問をすれば、それなりの答えを返してくれます。
生成型AIという言葉を良く聞くようになったのはまだ最近のことなのに、既にこのレベルの文章作成力があることに驚かされます。使い方によっては特に国際派診断士にとって大きな力になりそうです。
一方で、生成型AIが簡単に答えるようなレベルの一般的なアドバイスでは、診断士の存在価値は大いに低下してしまうであろうとも危惧されますので、我々診断士には非常に厳しい時代が来たとも考えられ、今後はさらに一人一人の顧客に寄り添った支援を心がけていく必要があると強く感じる今日この頃です。
以上