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ミクロネシア地域でのCompact of Free Associationについて

2023-12-24

三多摩支部国際部
国際経営技術総合研究所
安藤孝政

はじめに

大洋州のミクロネシアは5つの国で構成されています。パラオ、ミクロネシア連邦(FSM)、キリバス、ナウル、マーシャル諸島(RMI)です。これらの国々のうち、パラオ、FSM、RMIは第二次世界大戦後、アメリカの国連信託統治領でしたが、それぞれ憲法制定および自治政府樹立を経て、アメリカと自由連合盟約(Compact of Free Association:COFA)を締結し、FSMとRMIが1986年、パラオが1994年に米国自由連合国として独立しました。
本稿では、ミクロネシアのパラオ、FSM、RMIの3ヶ国、特に、RMIに焦点を当て、COFAについて説明します。

ミクロネシアの位置関係

<ミクロネシアの位置関係>

 

Compact of Free Agreement(COFA)の概要

COFAはアメリカとミクロネシア3カ国で結ばれている軍事・経済支援協定です。具体的には、米軍が当該3か国の安全保障・防衛について、陸・空・海を使用する権利を与えられる代わりに、アメリカは、同国に対して経済援助、防衛、その他のサービスや利益を提供する義務を負うという内容です。
すなわち、当該3か国には日本で言う防衛省は存在しません(自衛隊もありません。ただし、海上保安庁はあります)。一方で、当該3か国政府は外交権や警察権など独立国としての権利を有しており、当該国の国民は米国にビザなしで居住・労働が認められています。
COFAは1986年に始まり、FSMとRMIでは15-20年いう期限があります(延長可能)。前回締結されたCOFAは2003年10月であり、その効力は2023年9月に失効します。そのため2023年はCOFAをどのような条件で延長するかを議論した重要な年でした。パラオについては、1993年にCOFAが開始され、期限は2044年までですが、必要に応じて締結内容が改訂されています。
また、RMIのCOFAにはRMI、米、台湾が拠出した信託基金(Trust Fund)があります。これは拠出金を資産運用することにより、その運用益を国の予備的な財源とするというものです。
COFAのその他詳細はWikipedia「自由連合盟約」ご検索ください。

マーシャル諸島(RMI)でのCOFAについて

2022-2023年はRMIにとってCOFAをどのように延長するのか(または、しないのか)という交渉を米国側と行う重要な年でした。2023年1月にロサンゼルスでCOFAを延長することに両政府が合意しましたが、金額や締結内容については継続検討となりました。米国側は経済援助を継続し、協力額はできるだけ抑えたい考えです。一方、RMIは核実験賠償拡大、Trust Fundへの拠出増加、RMI産水産物の米国への輸出自由化、安全保障に、(戦争だけでなく)気候変動を加えること等を主張しました。
結局、RMIの本協定の20年延長に係る署名がホノルルで10月17日に行われました。その数か月前にパラオとミクロネシア連邦のCOFA延長は決定しており、RMIだけがCOFA延長に時間を要しました。水爆実験の補償が少ない、国会の承認が降りない、COFA交渉担当官が変更になった等が理由です。今後20年のRMIという国の将来を左右する重要な契約ですので、RMI政府としても自国民の理解や米国との外交の駆け引きで板挟みになる難しい交渉でした。

COFAの組織図

この章ではCOFAの具体的な構造と中身について説明します。COFAは下図のようになります。特に、下記の①~③についての説明を記載します。

①Compact of Free Agreement(COFA)

COFA
<出典:筆者作成>

①COFAの運営はJEMFAC(Joint Economic Management and Fiscal Accountability Committee)という委員会で実施されており、アメリカとRMIの代表者で構成されています。具体的には資金管理、活動の立案・進捗確認・評価、事業監査の実施等です。
②Compact Grant Assistance:アメリカ政府のみからの資金・技術協力の枠組みであり、教育、保健・医療、民間セクター開発、環境保全、インフラ整備、公共サービスの分野で資金協力、技術協力等を実施しています。具体的には、学校校舎建設、地方電化や水道整備、医薬品の提供(新型コロナウイルスワクチンはアメリカから大量に提供)、郵便事業の提供(RMIはアメリカ国内扱い)等です。
③Compact Trust Funds:2004年4月に発足したアメリカ、RMI政府で毎年積み立てている基金であり、不測の事態やCOFA終了後を見据え、教育や保健分野等の経済開発や政府予算の財源とするのが目的です。台湾は2005年4月から参加しています。当該3ヶ国でTrust Fund Agreementを締結し、委員会を設置して運営しています。平時は債券、不動産投資、投資信託などで基金の運用をしています。

おわりに

RMIは水産業やココナツ以外の主産業が無く、陸地も少ないです。そのため、外貨獲得が困難、不便な海上交通、ごみ処理場がない、IT化や教育の遅延、地球温暖化による国の水没危機等、社会問題が多々あります。RMIの歳入の多くはアメリカや日本等の経済協力に頼っています。2023年に、一年以上かけたCOFA延長交渉が終了しましたので、日本と同じ被爆国としての経験を世界に訴えつつ、今後20年かけて、COFAに依存しない国作りをしてほしいと願っています。

以 上