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世界平和を願う「Origami」の歴史

2024-09-01

三多摩支部国際部
石井俊哉

はじめに

突然ですが、皆さんが最近折り紙を折ったのはいつですか?

私事ですが、2023年に日本折紙協会認定折紙講師という資格を取った関係で、海外で折り紙はどのように普及しているのかを調べてみると、折り紙文化は世界共通語の「Origami」という名で、世界で大きく広がっていることが分かりました。
今回は異文化理解の小話として、「折り紙」が「Origami」としてどのように世界に羽ばたいているかについてお伝えしたいと思います。

折り紙の歴史を紐解く

日本折紙協会の公式サイトによると、7世紀初めに大陸から紙の製法が日本に伝えられ、供物や贈り物の包みを美しく折って飾る儀礼折が折り紙の起源だそうです。
江戸時代に入り、寛政9(1797)年には世界で最も古い折り紙の本「秘傅千羽鶴折形」が出版されており、明治時代には「折り紙」は幼稚園教育にも取り入れられていました。
出所:おりがみの歴史(日本折紙協会公式サイトより)

世界の折り紙団体

日本では、「日本折紙協会」と「日本折紙学会」の2団体が折り紙の普及に努めていますが、海外を見ると、日本折紙協会の公式サイトには、21の所在地に約30団体が掲載されています。
北中南米11団体:
アメリカ2、メキシコ1、パナマ1、コロンビア2、ブラジル4、ベネズエラ1
欧州地域13団体:
イギリス1、イタリア3、オーストリア1、オランダ2、スペイン1、ドイツ1、
ハンガリー1、フランス2、ポーランド1


出所:海外の折り紙団体リンク集(日本折紙協会公式サイトより)

では、実際に海外でどのように折り紙が普及しているかをご紹介します。

イギリスのOrigami団体「British Origami Society」

「British Origami Society(以下、BOS)」は、1967年にロンドンのラッセル・ホテルの一室で、マジシャンや特許代理人、主婦や弁護士など様々な職種の折り紙愛好者11人によって慈善団体 (Charity) として設立されました。
その後、書籍出版や展示会、講演等で会員を増やして「Origami」の認知度を高め、2016 年からコルチェスターにある「折り紙図書館」に、折り紙作品や折り方の説明書、4,000冊以上の折り紙に関する書籍が展示しています。
ちなみにマジシャンだった初代会長のMr. Robert Harbin(以下、ハービン)は1956年に「Paper Magic : The Art of Paper Folding」という折り紙書籍を出版しており、この書籍が米国の貴婦人に読まれたことで、アメリカのOrigami団体である「OrigamiUSA」が誕生することになりました。


出所:The History of the Society(British Origami Society公式サイトより)

アメリカのOrigami団体「OrigamiUSA」

「OrigamiUSA」は、1958年にMs. Lillian Oppenheimer(以下、リリアン)と友人たちが設立した「The Origami Center of America(以下、TOCA)」が前身となっています。
彼女は、「羽ばたく鳥」という折り紙作品や前述の書籍「Paper Magic」がきっかけで、折り紙の普及活動を始めたそうです。
「TOCA」設立時、既に彼女は60歳でしたが、「BOS」初代会長のハービン氏に会うために渡英、「現代折り紙の父」と呼ばれている吉澤章氏に会うために来日しています。来日時は日本の新聞にも取り上げられたようです。
彼女の没後、「OrigamiUSA」に発展し、現在はニューヨークにあるアメリカ自然史博物館に世界最大規模の折り紙関係の専門図書館を有し、近年ではオンラインの講習会も行っているそうです。


出所:History(Origami USA公式サイトより)

「Paper Folding」が「Origami」になったきっかけ

2つの折り紙団体の歴史を見ると、折り紙文化は日本人が伝承したわけではなく、「Paper Folding」として各国で独自に生まれ発展し、折り紙愛好者に広まっていったようです。
では、なぜ「Paper Folding」が「Origami」と名を変えたのでしょうか?
それは、アメリカにいた前述のリリアンが、ニューヨーク・タイムズのインタビューやテレビ出演をした際に、「Paper Folding」ではなく「Origami」と呼んだことが理由であると言われています。
では、なぜリリアンが「Origami」と呼んだのでしょうか?
それは、「Origami」という言葉の響きが魅力的かつ欧米人にとって発音がしやすかったこと、そして「現代折り紙の父」と呼ばれ、折り紙の平和性を訴えていた吉澤章氏を深く尊敬していたことが理由のようです。

吉澤章氏の名刺には、英語でこのような一文が書かれていたそうです。
「みんなが紙を折れば、決してこれ以上この世界で戦争は起こらないだろう」
出所:松浦英子氏研究論文「Origamiの誕生-リリアン・オッペンハイマーによる普及活動を中心に-」

まとめ

当時はネットなど無い生活環境において、「Origami」という日本語が世界共通語としてグローバルに羽ばたいたことは、日本人として誇らしい想いです。

折り紙を折るのが得意だったので興味本位で折紙講師の資格を取りましたが、今回コラムを書くにあたり、歴史を深く知ることで、先人の深い想いを知ることができました。
世界情勢はますます混沌としていますが、「Origami」にこめられた想いを忘れず、日々大事に生きていこうと思います。

以 上