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為替リスクマネジメントについて最近思うこと

2025-02-21

三多摩支部国際部
岩橋 健治

小職は、「輸出入企業の為替ヘッジ取引コスト削減」コンサルティングをメインに行ってきましたが、コロナ禍初期に、「岩橋さん、申し訳ない。資金繰りに気を使わなければならないので、この話しばらく様子見にさせてください。」といったお客様が結構いました。それは、輸出入企業の為替ヘッジ取引コスト削減=銀行への支払手数料の削減という脈絡だったことによるわけです。その後も銀行への忖度は結構目にします。
その為最近は、銀行への支払手数料には全く手を付けずに行う、為替ヘッジ取引コスト削減をメインに方針転換しました。事業フローと金融商品による為替ヘッジフロー全体を見直して、そこにある無理・無駄を見つけ効率化することにより、コスト削減につなげる、というわけです。そうやって見ると、実は銀行への支払手数料の削減よりも大幅なコスト削減につながることがわかってきました。そこでの気づきをいくつか挙げてみたいと思います。

①為替リスクは、商売(輸出入だけでなく、それらと対の国内仕入や国内販売も)における価格決定方法によって異なる=商品によって、会社によって、業界によっていろいろなパターン
⇒最適な為替リスクヘッジ手法も千差万別。 お客さん毎にテーラーメイドなソリューション提示が必要。

②輸出入為替リスクと一般的な為替リスクに性格は異なり、全くの「別物」と考えるべき
⇒最適な為替リスクマネジメントも大きく異なる(価格転嫁という手法の有無)。 金融機関は金融商品を使ったソリューションしか提示しないが、実は金融商品を使わないソリューションが結構ある。

③為替リスク(相場変動)への向き合い方の違い=予想して勝ちにいくのか、あるがままに受け入れるのか?
⇒機関投資家や為替ディーラーと同じ土俵で戦うのか、本業で勝負するのか?
*勝たなければならない連中と、為替では負けなければ良い輸出入企業。
*為替でも勝ちたいと言う中小企業経営者には、「55勝45敗であれば、優秀なプロの為替ディーラーと言われるのに、100%勝ちたいと思っているのが間違い。」と話します。
*同じ資本金を使ってリスクをとるのであれば、勝つ確率が高い本業に集中すべき

④重要なのは、現状とっている為替リスクを増加させない(or減少させる)形で実現するコスト削減
⇒実は、正しい為替リスクマネジメントをすればおのずとコストも下がる、というわけです。
⇒銀行は、正しい為替リスクマネジメントを指南するわけではなく、中小輸入企業に追加的な為替リスクを取らせて、見た目のコストを下げる金融商品ばかり勧める。つまり、「円安リスクをヘッジしましょう。」と言って、長期の「円高リスクを取らせる」金融商品ばかりで、「為替リスクをヘッジする」手法の提示はまずしない。

⑤しかし、今回の円安局面で多くの中小輸入企業が国内取引先への価格転嫁ができない中で、投機性が高いが今の実勢より大きく円高のレート(例えば1ドル130円)でドルが買える金融商品を銀行から提示されて、仕方なく手を出している。
⇒リーマンショック直後の急激な円高局面で、多くの非上場中小輸入企業が破綻に追い込まれた構図と全く同じ構図になってきている。メガだけでなく、多くの地銀が販売している投機性の高い金融商品の市中残高はいまや、リーマンショック後の残高を凌駕しているそうです。
麻薬(投機性が高いが今の実勢より大きく円高のレートでドルが買える金融商品)中毒患者が蔓延しつつあり、同業他社が手を出していれば、国内販売先への価格競争上その麻薬を自分も飲まなければ、販売競争に負けてしまうので、しぶしぶ手を出す企業も増えている模様。つまり公正な競争を、麻薬を使って阻害している状況。銀行はもうかるから販売しているとみられるが、麻薬販売業者と同類と言っても良いと思われます。役所の出番では?

 

以 上