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日本茶からMATCHAへ

2025-06-07

三多摩支部国際部
石井俊哉

はじめに

私の住まいや勤務地は「狭山茶」の生産地と縁があり、のどかな茶畑を度々目にします。私自身も昔からお茶を好んで飲んでおり、地理的にも嗜好的にも「日本茶」は身近なものです。

図表1:のどかな狭山茶の茶畑(埼玉県所沢市某所)

また、二度目の大統領就任となったトランプ大統領が、2025年2月に発した「トランプ関税」の影響により、市場の混乱や株価の乱高下がいまだ続いている状態となっています。
そのような経緯から、「日本茶の海外輸出」と「トランプ関税影響想定」の関係性について調べました。

日本茶の輸出統計

日本茶(緑茶)の輸出実績を見ると、概ね右肩上がりの伸びとなっており、特に新型コロナウイルスの発生以降、抗酸化作用がある「カテキン」やリラックス効果のある「テアニン」など、健康志向の高まりによって大きく増加しています。

図表2:日本茶(緑茶)の輸出状況

出典:中日新聞サイト(財務省貿易統計より)

次に、昨年2024年の日本茶の詳細な輸出実績を見てみましょう。2024年では輸出総額として約364億円の規模となっています。

図表3:2024年12月日本茶輸出実績データ(筆者加工)

出典:日本茶輸出促進協議会サイト

特筆事項としては、輸出の内訳を「粉末」と「その他」に分けており、輸出量も金額も「粉末」が圧倒的な多数を占めている点です。
その理由は、「日本茶」が海外でどのように嗜まれているか?にありました。

「日本茶」から「MATCHA」へ

日本ではペットボトルやティーバッグが手軽で一般的ですが、やはり茶葉とお湯を急須に入れて飲むのが伝統的な飲み方ではないでしょうか。一方、農林水産省や日本茶輸出促進協議会等の公開情報から最大シェアである米国を見てみると、日本茶は「MATCHA」という名前で高い知名度を誇っています。つまり米国では茶葉(リーフ)ではなく、抹茶(パウダー、粉末状)が嗜まれているようです。一般消費者が自宅で飲むために小売店で販売されるB to C向け商品もありますが、主な輸出品はStarbucksやGong Cha等のカフェやレストランで使用されるB to B向け商品が多く、具体的には抹茶のラテやスムージー、アイスクリーム等に使われています。これらは、前述した健康志向の高まりにより若年女性層を中心に需要が伸びているそうです。

米国の関税影響(2025年5月末時点)

日本茶の輸出はフレーバーの有無で区分されており、JETROの米国輸入関税のデータを調べると、2024年までは「フレーバーなし」の場合は無税、「フレーバーあり」では日米貿易協定により3.2%でした「トランプ関税」については流動的であるものの、「World Tariff」で2025年5月末時点の関税率を検索すると、「フレーバーなし」は10%、「フレーバーあり」では16.4%となっています。輸出量では「フレーバーなし」が多いため、低く見積もっても364億円×10%=36.4億円以上が課税されることになり、大きな負担を強いられることになります。

終わりに

最後に、今回のコラムを書くきっかけになった狭山茶について、少しご紹介します。
狭山茶の主産地である埼玉県庁のHPによると、2024年実績では生葉の収穫量は全国8位で3,700トンとなっています。ちなみに生葉収穫量全国1位は鹿児島県で、130,900トンで、埼玉県の35倍以上となっています。耕地面積や収穫量は少ないものの、「色は静岡、香りは宇治よ、味は狭山でとどめさす」ということわざもあり、狭山茶は静岡茶、宇治茶と並んで日本三大茶とされています。そして、海外では有機栽培や宗教上の認証、残留農薬基準などに対応することが求められますが、JETROのHPでは、2023年にドイツのプロモーションイベントに参加した狭山茶生産者の方の事例が掲載されており、海外展開も行われています。

今回のコラム執筆にあたり情報収集を行っていく中で、「狭山茶×海外」「狭山茶×中小企業診断士」という活動について知ることができました。将来的に自分も何か役に立てるように、まずは日々お茶を飲みながら消費に貢献していこうと思いました。

以 上

※参考情報

  • 農林水産省「特集「日本茶を世界に届ける」」
  • 日本茶輸出促進協議会「米国における抹茶流通・消費動向調査の報告」
  • World Tariff
  • JETRO「米国 茶の輸入規制、輸入手続き」
  • 狭山県庁「埼玉県の茶の順位(令和6年産)」
  • JETRO「ドイツ市場に挑む狭山茶生産者」