インドネシアの通信インフラ事情
三多摩支部国際部
水田昌志
1.はじめに
最近、私の勤務先の後輩がインドネシアへ出張に行ってきました。思い起こせば、私自身も1999年に約2週間インドネシアに滞在し、国際海底光ケーブルの陸揚げ局で設備構築に従事した経験があります。懐かしさもあり、後輩へのヒアリングも交えながら、インドネシアの通信インフラ事情をあらためて調査してみました。
2.インドネシアはどんな国?
「インドネシア」の「ネシア」は「島々」を意味すると言われています。現在のインドネシアは約13,000以上の島から構成される世界最大級の島嶼国家です。。
国土は日本の約5倍と広大です。
全国民の平均年齢は約29歳と若く、若年層の比率が非常に高い国です。総人口は2045年に約3億2,400万人に達すると見込まれています。
宗教はイスラム教、キリスト教、仏教など多様で、互いの宗教を尊重する文化が根づいています。就業時間中にイスラム教徒の礼拝時間を認める企業も多いと聞きます。
もっとも、私が滞在していた当時、ラマダン期間中に若いイスラム教徒の女性が隠れてマクドナルドを食べているのを見かけ、戒律の運用は人や場面により柔軟なのだと感じました。
3.インドネシアの通信インフラの普及状況
インドネシアの固定ブロードバンド(FTTH/DSL/ケーブル等)の普及率は、他の主要国に比べて低い水準にとどまっています。広大な地理、島嶼国家という特性、敷設コスト、モバイル優位の需要構造が背景です。
1)固定ブロードバンド
世帯普及率は約15%(2021年時点)で、ASEAN諸国の中でも極めて低い水準です。
FTTH(Fiber To The Home)の料金は約4,000円/月程度と相対的に高止まりしており、都市部の高所得者層が中心で、低・中所得層には十分に行き渡っていません。地方・離島では固定網の未整備や接続料金の負担感が普及のボトルネックになっています。
2)モバイルとの対比
4Gの広域整備と5Gの段階的展開により、家庭の主要インターネットをモバイル回線で賄うケースが多い状況です。
しかしながら、Speedtest.netの「2023年12月の国別速度中央値」のランキングによると、インドネシアはモバイルネットワークが25.0Mbpsで97位(146か国中)、固定ネットワークが27.9Mbpsで126位(178か国中)で、インターネット速度では東南アジアワースト3に位置づけられています。
現地に出張した後輩から、現地の人の話によれば公共施設のWi‑Fi等で動画をダウンロードして家庭で視聴する人が少なくないと教えてもらいました。
4.デジタルデバイド解消に向けた日本企業の動向
日本企業もンドネシアでのデジタルデバイド解消に向けた動きを加速しています。
1)東日本電信電話株式会社(NTT東日本)
NTT東日本は、グループの海外事業を担うNTTイーアジア株式会社を通じ、インドネシアでの低価格帯FTTHサービスの拡大、インターネット世帯普及率の向上、デジタルデバイド解消をめざして、現地企業PT. Solusi Sinergi Digital, Tbkへの戦略的出資を発表しています。
報道発表:https://www.ntt-east.co.jp/release/detail/20250411_01.html
2)株式会社NTTドコモ・日本電気株式会社(NEC)
株式会社NTTドコモと日本電気株式会社(NEC)の合弁会社である株式会社OREX SAI、インドネシア現地法人PT OREX SAI Indonesia、現地企業PT Solusi Sinergi Digital Tbkは、手頃な価格のインターネット接続サービスや、未接続地域への高速アクセス実現に向けて本格商用契約を締結しました。
報道発表:https://ssw.web.docomo.ne.jp/orex/pressrelease/20251112.html
5.ジャカルタの架空ケーブル敷設状況
東南アジアでは、電柱に電線が乱雑に張り巡らされた風景を目にすることが多く、ジャカルタも例外ではありません。
歴史的に、電力・通信・ケーブルTV・インターネット事業者が個別に架空敷設を進め、インターネット需要の急増期には、FTTHや企業向け回線を「とにかく早く引く」ため最短でサービスできる架空敷設が選好されました。
共同で電柱を利用する「電柱共架」より、各社が単独柱を建て、単独でケーブルを敷設するほうが短期コストや調整負担が小さいことも、無秩序化の一因です。
日本では電柱付近のケーブルは「クロージャー(ジョイントボックス)」に収納して融着(スプライス)し、きれいに整理する工法が一般的ですが、インドネシアではケーブル余長を電柱に巻く「ケーブルループ」工法が主流です。
これは工事の単純さやコスト削減(融着の技術や設備が不要)といった短期の実装効率・リスク低減の観点で採用されやすいというのが理由です。
6.インドネシアの今後
インドネシア政府は、独立100周年となる2045年までに高所得・先進国水準をめざす長期ビジョン「ゴールデン・インドネシア2045」を掲げています。
またジャカルタの環境・インフラの限界と国家の均衡発展を両立させる国家プロジェクトとして、新首都「ヌサンタラ」への完全移転を計画。2019年の移転方針公表を経て、2022年にIKN法*が成立し本格化しました。
「ゴールデン・インドネシア2045」の実現を目指し、インドネシアの通信・デジタル省は 「デジタル・インドネシア2045」というデジタル戦略ビジョンを発表しました。
・信頼できる電子政府の実現
・デジタル技術に基づく革新的な経済の育成
・全国どこでも高速・信頼性の高い接続(光、5G/将来6G、衛星)の整備
などを目標に掲げています。
今後、インドネシアの通信インフラがどのように進化・発展を遂げていくのか、引き続き注目していきたいと思います。
IKN法*:「Undang-Undang Ibu Kota Negara(IKN)」、日本語では一般に「新首都法」
または「ヌサンタラ新首都法」、2022年にインドネシア国会で可決・成立。
(参考出典)
・外務省HP インドネシア共和国 基礎データ
・NTT東日本HP 報道発表資料(2025年4月11日)
・NTTドコモHP 報道発表(2025年11月12日)
・総務省 世界情報通信事情ホーム インドネシア
・カケモチHP インドネシアIT記事






