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外為相場の方向性について

2012-06-26

外為相場の方向性について

2012年6月26日
東京都中小企業診断士協会
三多摩支部国際部
永吉 和雄

■短期的には膠着状態
ギリシャも、再選挙後に内閣が成立して、当面はユーロから離脱、といった懸念は無くなりました。世界の金融マーケットには少し落ち着くかな、との期待が出てきています。ドルやユーロに対する円高も一服しています。しかしながら、欧州金融不安は今後すぐに解決する問題であるはずもなく、円は避難通貨として引き続き買われる場面があるとの見方が一般的なようです。変な話しですが、相場の方向が不透明な時期には、デフレで実質金利が高い円が相対的に安全である、とのコンセンサスが為替ディーラー等の外為マーケットの参加者にはあるようです。成長力・競争力は無くても財産はまだ持っている世界最大の債権国である日本、その通貨の円はそれなりに評価されているのでしょう。目先の外為相場(例えばドル/円)を見通すのは大変難しい状況です。

■長期的なシナリオは様々
長期的な視点でのドル/円の予想には、じつに様々なシナリオに基づく議論があり、それぞれに説得力を持っているように思えます。

例えば、日本悲観論に基づく超円安論。これは変動相場制に移行してから約40年間続いている長期円高トレンドが近々反転するというもの。少子高齢化を最も早く迎えている日本は、今後貯蓄を取り崩していかざるを得ない、また、コストに見合った質の労働力を日本で確保できなくなる企業は海外に出て行き、産業の空洞化がますます深刻になっていくというものです。円は長期的に売られ、今の水準に戻ることはない、との予想になります。

一方は、主にアメリカ弱体化論等に基づく超円高論。これは昔からあるのですが、その理屈はともかく、結果としてはその通りになっている主張です。円高方向に振れている時期には、「1ドル50円になる」といった議論が多く出てきます。基軸通貨国だが最大の純債務国であるアメリカは、現在の力を維持していけるはずは無く、大幅な調整が必要との議論です。

■はっきりしている実需面の変化
短期的にも、長期的にも予想しにくい外為相場ですが、実需に基づいた資本・資金の流れを確認することが重要なのでは、と考えています。外為マーケットでの代表的な実需は、対外・対内直接投資の資金手当て、輸出・輸入の決済、に関する需要です。

直接投資の動きですが、日本企業の海外展開は加速しつつあります。大手商社等の資源関連投資等の大型投資案件が多く出ており、また、製造業の海外進出はいよいよ本格化しています。直接投資については、日本から海外に出て行く資金の方が海外から国内に入ってくる資金より多く、恒常的に円安要因になっています。リーマンショックでの一時的なゆり戻しはあったものの、近年ますます拡大してきています。

一方、輸出・輸入の動向ですが、ここまで円高が進んできた根本的な要因は、貿易収支が常に大きな黒字であったことだと思います。しかし、近年貿易黒字は縮小傾向にありますし、2011年は赤字にもなりました。貿易赤字が定着したとは思いませんが、大きな貿易黒字が当然、という構造はすでに過去のものになったと言えます。

従来より円安要因であった直接投資の動きは加速してきており、円高要因であった貿易黒字は減少してきています。今まで綱引きのような状態であった対外直接投資にからむ円売りと、輸出決済の円買いのバランスが崩れ、ドル/円の動きを決定してきた要因の変化が起こっています。実需面から見ると、円安方向のエネルギーとなっていると思われます。

■今後の見通し
今後のドル/円レートの動きですが、ユーロ危機がもう少し落ち着いてきた時には、実需面の要因にスポットライトが当たる可能性が高いと思っています。一旦円安方向の流れが出てくれば、海外への投資を検討している企業、及び輸入企業はドルの買いを急ぎますし、輸出企業はゆっくりとタイミングを待ってのドル売りを行っていけますので、円安方向の動きが加速すると考えられます。また、経験的には、2年から5年程度の周期で、ドル/円レートの中期的トレンドは変っています。今回の円高トレンドのスタートは2007年の1ドル120円超からで、既に約5年間続いていて、心理的にもドルを買いやすい状況になっています。投機筋のポジション等、実需以外の要因が短期的には強く働く外為市場ではありますが、中期的なトレンドを決めるのは実需に基づく需給関係が重要であると思っています。

以 上