日本で唯一の経営コンサルタントの国家資格を持つ中小企業診断士の集団です

年度基本方針

 支部長 橋爪 直幸

ニューノーマルの定着と事業環境の急激な変化

 令和2年春から始まった新型コロナ感染症拡大がもたらした社会活動、経済活動への制約による影響は極めて大きなものがありました。インバウンド消費の縮小やEコマース活況で大手中小を問わず小売業は販売機会の減少に苦戦しています。また出張や旅行、団体での飲食機会減少、度重なる営業自粛要請に応じた飲食業や各種サービス業の業績回復は遅々として進んでいません。さらに各種の世界情勢によるエネルギー問題や資源・食料の需給バランスの変化による原材料の逼迫や高騰は、多くの製造業の足許での業績懸念材料となっています。また地球視点での環境問題に目を向ければ、2050ゼロカーボン必達のための脱炭素経営の推進は、企業規模に係わらない喫緊の課題となっています。

 働き方の観点では、あえて組織に属さないフリーランスの増加、大手企業を中心としたリモートワークの定着や兼業副業の容認拡大から、新しい働き方や収益を得る手段が創造されています。さらに企業での人材の流動化と非正規雇用の増大が進む一方で、中小企業・小規模事業者を中心とした人手不足が顕著になってきています。

 三多摩支部が担当する多摩地域26市3町1村と島しょ部2町7村に目を向けると、地域ごとの格差は一層拡大してきています。特に西多摩エリアでの人口減少傾向は鮮明となり、経営者の高齢化も相まって小売店の閉店や事業者の廃業から買い物や就業の場が徐々に減少していく懸念があります。島しょ部では主産業である観光産業がコロナ禍の2年間で大きなダメージを被り、人口減少率も加速していることから、地域経済は極めて厳しく危機的状況にあると認識すべきです。

 

地域と中小企業・小規模事業者から求められている「経営力強化」への対応力強化

 このような急激な事業環境の変化に対して、政府の大規模で継続的な財政出動や金融緩和策が運転資金の安定化といった一定の効果をもたらしています。一方で多くの中小企業・小規模事業者ではコロナ融資の元本返済開始が迫っており、変化に対応した抜本的な「経営力強化」による収益力の改善が喫緊の課題となっています。またインボイス制度の導入が来年度に予定され、その対応も迫られています。

 三多摩支部発足からこれまでの10年間、地域の関係機関との連携で中小企業・小規模事業者の支援を継続的に実施してきましたが、中小企業経営の環境変化の大きな流れの中では、組織および会員個々のハンズオン支援力が改めて求められています。

 三多摩支部がこれからの新たな10年に向かうにあたり、心機一転、支部事務所を移転しました。東京協会の基本方針と軌を一にしつつ三多摩支部の独自性を発揮して、今年度も多摩地域と島しょ部の行政機関や各商工会議所、東京都商工会連合会などの各方面の支援機関や金融機関との共創をベースに、域内5つの地域診断士会との協調と連携を深化させ、さらに三多摩支部会員の7割近い企業内診断士の高いポテンシャルを引出し積極的な活用を進めることで、地域と企業および支援機関の期待に応えることを目指し、次の重点施策を展開していきます。

 

1.意欲ある人材や若い人材を中心に組織化した現場即戦力の強化

 島しょプロジェクトを先例に、人材不足対策や生産性向上に資する中小・小規模事業者向けIT化推進、事業基盤の強化や新たな事業機会の創出に繋がる脱炭素経営への取り組み等、緊急性の高い支援ニーズに対応する目的別のタスクフォース化を行い、支援機関からの要請に即応できる体制を構築します。

2.行政・地域支援機関・金融機関と連携した地域活性化や企業支援への取組み

 引き続き各市町村、東京都中小企業振興公社、各商工会議所、東京都商工会連合会、金融機関、東京信用保証協会、TAMA協会等との連携を強化し、会員参加による高品質の支援を目指します。また地域や企業が直面する課題に即した支援策の提案を積極的に行い、支部と会員の活動領域の拡大を図ります。

3.新たな収益事業開拓への取組みと適正な運営

 コロナ禍の2ヶ年度で支部収益事業の内容や規模が従前とは大きく様変わりし、窓口相談業務事業が過半を占めるになりました。コロナ禍の終息状況にもよりますが、島しょ部支援を含めた現場課題解決に資する収益事業の発掘に積極的に取り組みます。

 支部収益事業および東京協会収益事業の専門家は、経験や専門性も重視しつつ、公正公平の観点から、入会年度は浅いながらも意欲的な会員や企業内診断士を積極的に選考します。また収益金については、収益事業管理規則に従った処理を迅速に行うと併せて、収益金の予算化と使途の明確化を図ります。

4.「会員あっての組織」の理念に基づく会員満足度の向上

 長引くコロナ禍では残念ながら会員満足に資する取り組みの多くが実現できませんでした。知識やスキルのアップ、実務従事ポイントの獲得、会員同士の交流、支部活動や企業支援での謝金獲得など、各部の事業計画による多様な機会をコロナ禍の制約でも工夫しつつ提供し、会員満足度の向上に努めます。

5.情報共有・コミュニケーションに資するツールや資源の活用推進と定着

 東京協会の共通プラットフォームの会員による活用を推進し、効果を体感することでの活用定着を目指します。具体的にはGaroonを活用した支部・会員間の情報共有、kintone各種アプリを活用しての業務効率化等、Zoomを活用することでの気軽で頻繁なコミュニケーションの実現です。さらに新事務所の活用推進への仕組み作りを進めます。

6.地域に密着した社会貢献活動の推進

 東京協会の方針と軌を一にして、島しょ部など地域社会の活性化などへの貢献活動、および地域支援機関と連携した経営力強化支援経営者向けセミナー開催などを積極的に推進します。また、認定研究会が主体となって実施する社会貢献活動については経費の一部を支援します。

7.重点志向の予算配分と効果的な執行

 予算については重点事業への優先的な振り分けを実施します。また、先を見据えた意欲的な事業への予算を確保することで、会員と三多摩支部の将来への先行投資とします。予算化された事業の執行については期中から継続的に進捗の管理を行います。